とまらぬロシアに国連ができること 拒否権を使わせた狙い、次の手は
ウクライナ危機をめぐり、国連の存在意義が問われています。国際の平和と安全の維持を担う国連安全保障理事会は、常任理事国にロシアがいるために、有効な手を打つことができません。全193カ国が加盟する国連総会では、圧倒的多数でロシアを非難する決議案が出されました。しかし、その2日後、ロシアはウクライナの原発を攻撃するという暴挙に出ました。
国連はどのような役割を果たすべきなのか。現実的になにができるのか。「機能不全」という言葉で片付けていいのか。国連外交の専門家であり、また、前日本国連代表部次席常駐代表でもある星野俊也・大阪大大学院教授に聞きました。
――国連総会がロシアを非難する決議を採択しました。193カ国中141カ国が賛成しました。
西側の先進国のみならず、南の途上国や、ロシアと関係の深い国の一部までも含め、これほど多くの加盟国が一致してロシアを非難する場面を演出できたことは、きわめて重要です。世界のほぼすべての国の代表が一堂に会する国連総会だからこその光景でした。
しかも、今回の決議が採択されたのが、国連総会の「緊急特別会合」だったという点にも意義があります。これは1950年、総会で採択された「平和のための結集(Uniting for Peace)決議」に基づくものです。朝鮮戦争をめぐり、ソ連(当時)の拒否権で安保理の身動きが取れなくなった際に、総会にバトンタッチをして、国際の平和と安全の議論を進めるために編み出された制度です。安保理の要請としては、実に40年ぶりに開かれました。歴史の教科書に載るようなことが、いま目の前で、実際に起きています。
緊急特別会合の要請は2月27日。その2日前、安保理でロシアを非難する決議案が否決になっていました。この決議案を主導した米国、アルバニアは、事態の重要性に鑑みて、特例的に安保理メンバー以外にも決議案への共同提案を広く呼びかけました。名を連ねたのは80カ国以上に上ります。もちろん、安保理でロシアが拒否権を行使することは目に見えていて、それでもあえて、ロシアにぶつけたわけです。
ウクライナ危機をめぐり、国連にできることはなんでしょうか。有効な手を打てない安保理にも「抜け道」はあるといいます。安保理改革の方向性もふくめ、記事後半で詳しく語ります。
安保理では総会の電子投票と…
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- 【視点】
解説をされている星野教授には、私も国連のあり方について過去に何度かお話を伺いました。日本人で初めて国連難民高等弁務官を務めた故・緒方貞子さんに師事され、国際法と国連外交の現場の両方に精通されており、今回のお話も説得力があります。「国連は不可
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