前日銀総裁の白川方明氏が語る回顧録 「違和感に耐えられず」

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聞き手・吉岡桂子(編集委員)
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 白川方明(まさあき)・前日本銀行総裁の著作「中央銀行」の英語版と中国語版が相次いで刊行された。総裁時代(2008~13年)に「金融緩和に消極的」として批判を浴びた白川氏は、海外で展開される議論に「違和感」を強く覚えていたという。今回の出版の狙いを聞いた。

 ――英語版「Tumultuous Times(激動の時)」は2021年8月、エール大学出版会から刊行された。「セントラルバンカーの経験した39年」という副題がついた回顧録にもあたる原著の出版から3年余り。旧知のガイトナー・元米財務長官に仲介を依頼し、出版社は自ら開拓したそうですね。

 「そもそもの出版のひとつの動機は、日本経済や日本銀行金融政策についての海外の学界を中心に半ば常識のようにして論じられてきたことについて違和感を覚えることが多かったことです。この時期を日本銀行で働いてきたひとりの職業人として純粋に耐えられなかった。それ以上に、日本に経験に関する誤った解釈が日本はもとより世界の金融政策運営にも悪影響を与えています。そうした状況を少しでも変えるためには、英語でまとまった情報発信をするしかないと思いました」

バーナンキ氏は読んだか

 ――英語版では海外の読者を前提に、日本の経験を海外との比較を意識しながら加筆して説明していますね。同じ時期に中央銀行のトップを務めながら、金融政策をめぐって議論が分かれたバーナンキ・米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、読んだでしょうか。

 「彼が読んだかどうかは、わ…

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