憲法53条訴訟、憲法学者と考える 議会閉会の英首相に英最高裁は?

有料記事

編集委員・豊秀一
[PR]

 野党による臨時国会の召集要求を事実上無視した安倍晋三政権(当時)の対応の違憲性が正面から問われた裁判の判決で、広島高裁岡山支部(塩田直也裁判長=1月1日付で定年退官)は1月27日、一審の岡山地裁に続いて原告の訴えを退け、憲法判断をしませんでした。あまり詳しく報じられませんでしたが、そもそも同支部の判決に何が書かれていたでのしょうか。問題はどこにあるのでしょう。原告側の求めで裁判に意見書を4通提出し、一審からフォローしてきた憲法学者、志田陽子・武蔵野美術大教授と考えました。

一審に続いて訴えを退けた広島高裁岡山支部

 志田教授のインタビューの前にまず、基本的な事実関係のおさらいをしておきます。森友・加計学園問題の真相解明を求めて2017年6月、野党が憲法53条後段に基づいて臨時国会の召集を要求しました。ところが、安倍政権は98日間にわたって応じず、臨時国会を開くと冒頭で解散し、野党にとっては審議の機会が奪われました。これが憲法違反になるのかが、最大のポイントです。

 憲法53条にはこう書かれてあります。「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」

 召集までの時期は書かれていませんが、「召集を決定しなければならない」という文面を素直に読めば、98日間も応じず、冒頭解散によって審議する道を閉ざすということを憲法が想定しているとは思えません。野党の国会議員が原告となり、「臨時国会で質問する権利などが侵害された。臨時国会の不召集は憲法53条違反」などと主張し、岡山、那覇、東京の各地裁に相次いで提訴しました。

 3地裁とも憲法違反かどうかを判断せずに原告の訴えを退けたため、二審の判断が注目されていました。岡山支部判決が最初で、東京高裁で2月21日、福岡高裁那覇支部で3月17日と判決が続きます。

内閣に臨時国会を召集する義務があると認めたが

 安倍政権の対応が憲法違反かどうかを考えるうえで、裁判では三つの争点が明らかになりました。

 ①内閣には臨時国会を召集す…

この記事は有料記事です。残り3055文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら