5臓がないなら、ないように生きる がんになった安藤忠雄さんの覚悟

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聞き手・山内深紗子
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 2度のがんを経験した建築家の安藤忠雄さん(80)は、膵臓(すいぞう)などの5臓がない体で、今も元気に仕事をされています。困難を乗り越えるには、人生で身につけてきた考えが役立ったそうです。惜しみなく、語ってくれました。

2度のがん 能天気な私もさすがに「まずい」

 生きていれば、がんにもなる。しゃあない。人生うまいことばかり、とはいきませんからね。

 2009年と14年に2度がんが見つかり、胆囊(たんのう)、胆管、十二指腸、膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)を全摘しました。「5臓なしの体」になって約8年。毎月検査を受け、やれ腫瘍(しゅよう)マーカーが上昇してますね、など嫌な話も聞かないといけない生活を送っています。それでも私は、不思議と元気です。

 もともと健康には自信がありました。だから68歳で胆囊と胆管、十二指腸の交点にがんがあると告知された時は驚きました。

 「全摘しかない」と医師が言う。もう目の前が真っ暗です。でも一晩考えて、「それなら、しゃあない」と。全摘するとすぐに決めました。

 手術を終えて、やれやれこれで無罪放免と思っていたら、73歳の時にまた病院から呼び出された。今度は膵臓の真ん中にがんがあると。生存率の低い手ごわいがんです。

 また、膵臓と脾臓の全摘しか生きる道はないと主治医は言う。「膵臓を全摘して元気な人はいるのか」と尋ねると、「生きているけれど元気な人はいない」と。能天気な私も、さすがに、「まずいな」と思いました。でもね、自分でどうにもできないことは、「悩んでも、しゃあない」と思うんです。覚悟して、次は生き延びるためにできることを考えました。

治療は「選択の連続」 支えたのは宮本武蔵

 がん治療は選択の連続です。次々に変わる状況を受け入れ、一つ一つ冷静に決断して対処していかねばならない。

 若い頃読んで影響を受けた本…

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この記事を書いた人
山内深紗子
デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
専門・関心分野
子どもの貧困・虐待・がん・レジリエンス