「性行為に同意なし」、控訴審判決も伊藤詩織氏の性被害認定

村上友里
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 望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、ジャーナリストの伊藤詩織氏(32)が元TBS記者の山口敬之氏(55)に約1100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、東京高裁であった。中山孝雄裁判長は「山口氏が同意なく性行為に及んだ」と述べ、一審・東京地裁判決を追認した。賠償額は、治療関係費としての約2万円を加えた約332万円の支払いを山口氏に命じた。

 一方、伊藤氏の著書や会見などで名誉を傷つけられたとする山口氏の主張の一部も認め、伊藤氏に55万円の賠償支払いを命じた。

 高裁判決によると、伊藤氏は2015年4月、就職相談で都内のすし店で酒を飲みながら山口氏と会食した。その後、近くのホテルで性被害を受けた。

伊藤氏の著書など一部表現 元TBS記者に対する名誉毀損を認定

 判決は①伊藤氏と山口氏が性行為が想定される親密な関係ではなかった②伊藤氏が性行為直後に友人や警察などに性被害を相談した――と指摘。一審に続き、伊藤氏の説明内容が「信用できる」と判断した。

 性行為には合意があったと主張した山口氏の訴えについては、「事実経過と明らかに乖離(かいり)し信用できない」と認定した。そのうえで、ホテルに着いた時点で伊藤氏は飲酒による強度の酩酊(めいてい)状況だったと認め、「意識を失っているなかで同意なく性行為を始めた」と結論付けた。

 また、山口氏が1億3千万円の損害賠償を伊藤氏に求めた訴訟で、高裁判決は、伊藤氏が著書などで「(山口氏が)デートレイプドラッグを使った」と表現した部分について、「真実と信じる相当の理由もない」として名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害にあたると認定した。「山口氏が計画的に性的加害行為を行ったと受け取れる内容で社会的評価を低下させた」とも説明し、名誉毀損にあたらないとした一審判決を取り消した。

 伊藤氏は判決後の会見で、「同意がなかったと認められたのは大きい。裁判を通じて、性被害をめぐる社会や法律がどう変わっていくべきか光をあてたかった」と語った。

 山口氏は会見で、上告する方針を明かした上で「事実でないことを事実のように流布されたことを判決が認めたのは高く評価するが、判決全体には不満がある」と話した。

 東京地検は16年、準強姦(ごうかん)容疑で書類送検された山口氏を嫌疑不十分で不起訴処分としている。(村上友里)

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