「無視ルーレット」の標的になった中2時代 救ってくれた先生の言葉

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若松真平

 中学2年生の時、笏本(しゃくもと)達宏さんは「フル無視ルーレット」の標的になった。

 クラスの中で無視するターゲットが順番に回っているのは感じていたが、自分の番が来るとは思ってもいなかった。

 保育園の時から知っている友人が突然、口を聞いてくれなくなる。

 最初は違和感の方が大きかったが、ひとりで風呂に入りながら「イジメられているかも」とつぶやいた瞬間、現実を自覚した。

 こんなはずじゃないのにと思いながら、悔しい、恥ずかしい、怖い、といった感情が一気に押し寄せた。

    ◇

 翌日、登校はしたものの教室に入ることができず、早退することに。

 担任が職員室にいなかったので、居合わせたA先生に「早退したいです」と伝えた。

 理由を聞かれ、無視されていることを話すと、こう言われた。

 「誰にでもあることだ。先生も経験した。それはイジメじゃない。ちょっと無視されたくらいで甘えてたら大人になって通用しないぞ」

 その言葉を聞いて、自分を責める気持ちが湧いてきた。

 「僕が間違っていたのかも」「チクってダサい」「バレたらもっと無視される」と。

 すると、少し離れた席で聞いていた年下のB先生が、話に割って入ってきた。

 震える声で、A先生に向かっ…

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若松真平
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    内田良
    (名古屋大学大学院教授=教育社会学)
    2022年1月25日5時49分 投稿
    【視点】

    いじめ事案の報道や語りでは、どうしても、教師=悪として描かれる傾向にあります。記事にあるA先生は、ツイートでの反応にもあったように、まさに悪として非難される教師です。 ただ、笏本さんがB先生の振る舞いについて、「あの瞬間に僕のヒーローにな

    …続きを読む