DV避難前の口座に支給されて…ひとり親、届かない10万円給付

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山田暢史 贄川俊
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 18歳以下の子どもを対象にした10万円給付が「ひとり親世帯」に届かないケースが、埼玉県内でも起きている。家庭内暴力(DV)などで別居中の配偶者らに一度給付されると、そこから受け取るのは難しいのが現状だ。対策はないのだろうか。

DV避難前の口座に支給

 県内に住む30代の女性は昨年12月下旬になって、10万円が9月時点の児童手当の受取口座に振り込まれることを知った。女性はDVなどが原因で夫と別居し、離婚調停中。1歳の長男と実家に身を寄せている。

 元々住んでいた自治体に相談すると、DV被害が確認できた場合には、自治体の判断で給付先を変えることができると教えられた。すぐに住民票を元の住所から移し、必要な書類を出して児童手当の受取口座を変える手続きをとった。

 しかし、10万円は給付済みで、受け取れなかった。相談した弁護士には「調停の中で話がまとまらなければ訴訟を起こすしかない」と言われたという。女性は「実際に子育てをしている自分が受け取れないのはおかしい。行政はもっと早く知らせてくれればよかったのに」と憤る。

 県内に暮らす別の女性は、暴力などが理由で昨年秋に離婚した。子どもの親権は自分にあり、給付金も受けとれると思っていた。

 だが、12月に入って制度について話を聞こうと役所を訪れると、担当者から「児童手当の9月時点での振込先になる。国で決まったことなので振込先は変えられない」と告げられた。いまは仕事に就いているが、9月時点では専業主婦だった。夏ごろから夫の暴力から身を守るため、避難していたが、児童手当の振込先は夫の口座のままになっていた。

 弁護士に相談し、役所に必要な書類を提出。口座への振り込みをいったん止めてもらい、審査が通れば、給付を受けられることになった。ただ、納得できない部分も残る。「もしDV被害に遭ったことを伝えなければ何も受けとれなかった。こうした事例を知らない人たちは、どうすればいいのか」と話す。

 自治体が対象者を把握している児童手当の給付の仕組みを使えば、いちいち口座を申請する手続きはいらない。早く給付できる利点はあるが、給付先が本来受け取るべき対象とは異なる問題も起きやすくなる。内閣府の担当者は「年内に迅速に届けるための制度設計で、一律に変えるのは難しい。個別のケースにどう対応するかは自治体の判断になる」と説明する。

DV被害ないひとり親は

 DV被害がない「ひとり親」の場合はさらに状況が厳しい。

 受取口座の変更ができないか…

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この記事を書いた人
山田暢史
東京社会部|メディア担当
専門・関心分野
農林水産業、食、武道、災害
贄川俊
東京社会部
専門・関心分野
調査報道、労働問題、政治とカネ