パラクライミング世界王者が「音で見る」街 新技術が日常を変える
小林恵士
コツ、コツ、コツ。
白杖(はくじょう)が縁石のコンクリートを打つ。
コツ、コツ、カンッ。
薬局入り口の金属製の段差プレートかな。
ゴォー。
これはいつも回っているステーキ屋の換気扇。駅まで残り3分の1だ。
昨年12月の昼下がり。小林幸一郎さん(53)は自宅から西荻窪駅に向かっていた。約500メートルの道のりはいつも通りの音で、見えていた。
アウトドアメーカーに勤めていた28歳の時、進行性の網膜の病気で「将来失明する可能性が高い」と告げられた。50歳を迎える頃、光も判別できなくなった。
音は、見えていた頃の記憶と合わさることで、多くの情景を見せてくれる。
朝は、音が早い。革靴やヒールの足音が後ろから追い抜いていく。夕方になると、昼間聞こえていた工事の音はやみ、足音も朝より緩やかになる。
ジムで知り合った仲間が次々に「ガイド役」
西荻窪駅に着いた小林さんが向かう先は、三鷹駅そばのボルダリングジム。3月に控えた日本選手権に向け、練習を重ねている。
小林さんはパラクライミング…
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