センバツの「逆転現象」に消えない疑問 もっと丁寧な説明必要では
数日を経ても、いまだ釈然としない。
1月28日にあった第94回選抜高校野球大会の選考委員会で、東海地区(2枠)の2校目に昨秋の東海大会準優勝の聖隷クリストファー(静岡)ではなく、同大会4強の大垣日大(岐阜)が選ばれた。
成績下位校が上位校を上回る、いわゆる「逆転現象」だった。
高校野球担当の私は、昨秋の戦いぶりや成績からみて、東海2枠は地区大会優勝の日大三島と聖隷クリストファーの静岡勢が独占するとみていただけに、選考結果を聞いて驚いた。
なぜ逆転させたのか、十分な説明がなかったと感じている。
出場32校が発表された選考委員会総会で、東海地区の鬼嶋一司・選考委員長(元慶大監督)は過程をこう語った。
「個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで選考委員の賛否が分かれたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とする」
昨秋の東海大会で、大垣日大が1回戦で静岡(静岡3位)の好投手を打ち崩し、2回戦は愛知1位で優勝候補と見られた享栄(愛知)に競り勝ったことも考慮したと説明した。
客観的な判断基準が知りたくて総会直後の記者会見で真っ先に疑問をぶつけると、「特に投手力で差があった。春の選抜大会では失点の多いチームは厳しい」と返ってきた。そして、「(どちらが)甲子園で勝つ可能性が高いか。それを基準に判断した」と言った。
東海大会4試合で聖隷クリストファーは1試合平均での失点が5・25、大垣日大は3試合で同4・67。その差は1点に満たない。
委員の意見が割れるなか、どのように結論を出したのかなどの詳細は会見では明かされなかった。2枠をともに静岡勢が占めることになる地域性についても「全く考慮していない」と明言した。
これまでも「逆転現象」はあった。目立つのは、落選したチームが選出枠内に勝ち進んだ後に大敗したケースだった。
近年では、2018年の第90回大会の四国地区(神宮大会枠を含む4枠)で、四国大会4強の高松商(香川)ではなく、8強の高知が選ばれた。
高松商はこの大会の準決勝で英明(香川)に10点差でコールド負けした。高知は同じ英明との準々決勝に7―8で惜敗していた。
聖隷クリストファー、大垣日大とも昨秋は日大三島に敗れたが、そのスコアは大垣日大が5―10(準決勝)、聖隷クリストファーは3―6(決勝)と、18年の四国地区のような明確な差は認められない。
ちなみに聖隷クリストファーは東海大会2回戦で、大垣日大が県大会決勝で0―2で敗れた中京に4―3で競り勝っている。
「試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらずその試合内容などを参考とする」
「あくまで予選をもたないことを特色とする。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない」
選抜の出場校選考基準にはこう明記されており、私自身、「逆転」させること自体に異論があるわけではない。
ただ、逆転させる以上は、より多くの人が納得できるように、選考過程や選考理由をより詳細に、丁寧に説明すべきではないだろうか。
それは落選したチームにとっては夏へ向けた課題を明確にすることにつながるし、逆転で選ばれたチームには自信を与えることにもなると思う…