五輪開催の成果強調、相次いだ不祥事は少しだけ 組織委が報告書
今夏の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて、大会組織委員会は22日、大会を振り返る報告書を発表した。「安心・安全に運営できた」などと成果を強調する半面、準備段階で相次いだ不祥事やトラブルについては、短い記述だったり、記述そのものがなかったりしている。
国際オリンピック委員会(IOC)に来春提出する公式報告書とは別に、新型コロナ禍で史上初の1年延期となった大会の運営を「東京モデル」として示すために組織委が独自に作成した。670ページに及ぶ全体の振り返りのほか、持続可能性とジェンダー平等に関する報告書もまとめた。
運営の焦点となった感染対策は「クラスター事例や大会関係者から市中感染が広がった報告はない。(来年の)北京冬季大会でも(東京五輪の感染症対策の規則となった)プレーブックが刊行されるなど今後の世界における大規模イベントのスタンダードになった」と記載した。
簡素化に伴い海外から来日した選手・関係者は約4万3千人と当初の約4分の1に縮小。選手らのスクリーニング検査は100万回以上に及び、陽性率を0・03%に抑えたなどとした。
医療や警備、選手村の運営など一部の項目に関しては、大会中に起きた課題と対応が明記された。
過剰発注していたスタッフ用の弁当が廃棄されていた問題では、発注量の19%にあたる約30万食が食べられなかった。その一部についてはフードバンクに提供するなどしたが、「大会で生じた課題が今後の参考となることを期待する」と総括した。
一方で、不祥事やトラブルについての扱いは、「成果」とは対照的だった。
自身の女性蔑視発言による森喜朗・前会長の辞任については「組織委の人権に関する言動により『多様性と調和』を再認識する契機」になったと記すにとどめた。開閉会式の演出や制作メンバーの辞任が相次いだことについては「大会直前に至るまでスタッフの過去の言動について指摘があり、辞任などにつながった」と記した。
また、白紙撤回となった大会エンブレムや新国立競技場の問題などには触れなかった。
ジェンダー報告書では、選手村の診療所に女性選手のための窓口を設置するなどの取り組みを紹介しつつ、「計画段階からジェンダー問題に戦略的に取り組むことができていれば、より多くのインパクトを社会に残せた」と自戒する記述もあった。
中村英正・運営統括は「今回の報告書は主に本番に関わる事柄のみをまとめた」と説明した。橋本聖子会長は「運営の良かった点や得られた教訓を踏まえて今後の大会に引き継ぐべくポイントを整理した」と語った。