聖夜は紅葉に彩られ、サンタのそりも危機? 温暖化の先のクリスマス

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小堀龍之
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 雪は雨へと変わり、ホワイトクリスマスは幻に。クリスマスツリーの代わりに紅葉が見頃に、サンタクロースのそりを引くトナカイは絶滅してしまうかも――。気候変動地球温暖化)が進めば、クリスマスの風物詩も大きな影響を受ける可能性がある。

 「熱波の影響で、今年の京都の紅葉の見頃はクリスマスごろとなりそうです」

 気象キャスターが読み上げる天気予報に、クリスマスツリーと真っ赤な紅葉が映し出される。これは、国連の世界気象機関(WMO)が、温暖化への関心を高めようと2014年に作製した「2050年の天気予報」(https://www.youtube.com/watch?v=NCqVbJwmyuo別ウインドウで開きます)の一場面だ。

 動画は、気象庁気象研究所の川瀬宏明・主任研究官らが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気温上昇の予測シナリオに基づいて監修した。最新のIPCC第6次報告書で示された、二酸化炭素の排出が続くシナリオ「SSP5-8・5」に基づいても大きくは変わらないという。

 気象庁が続けてきた「生物季節観測」で、カエデの紅葉日が全国で年々遅くなっている。各地にある「標本木」を気象台の職員が観察し、大部分の葉の色が変わった日を記録する。

 京都では1956年には紅葉日が11月15日だったが、2020年は12月7日になっていた。東京では1953年に11月8日、2020年は11月27日だった。

 夏が暑くなって広葉樹光合成が活性化すると、落葉の時期が早まるという論文もあるが、紅葉の時期については温暖化でさらに遅くなる可能性も考えられるという。

 クリスマスの天気にも、温暖化が影響すると予測されている。

 川瀬さんたちは産業革命前の1850~1900年の平均気温に比べ、今世紀後半に4度程度上昇するというIPCCの予測シナリオを使い、実際にあった過去の天気をもとに、将来の天気予報がどうなるかを考えた。

 こうした予測には、今年のノーベル物理学賞を受賞した米プリンストン大学の真鍋淑郎さんの研究成果が生かされている。物理法則に基づき、二酸化炭素の影響も加味して、スーパーコンピューターで気温や風、水蒸気など大気の状態を計算する。

 気温が上がれば、日本では年間の降雪量は全国的に減ることが予想される。12月の降雪量も、北海道や山間部を除き、多くの地域では減る見通しだ。

 川瀬さんは「地域にもよりますが、気温が上昇すれば、緯度や標高が低いところでは、12月の雪は雨に変わってくるでしょう。雨のクリスマスの頻度が増える可能性があります」と話す。

 WMOは今月、ロシア極東・サハ共和国のベルホヤンスクで昨年6月に記録された気温38度が、北極圏での観測史上最高気温であると認定し、温暖化について警鐘を鳴らした。

 サハ共和国には多くのトナカイが生息しており、温暖化が脅威になっている。

 トナカイは冬場、雪にうもれたコケなどを食べる。北極圏の気温が上昇すると、いったん雪が解け、再び凍結してできた氷で地面が覆われる。その影響で冬場、氷の下のコケなどを食べられず餓死したり、やせ細ったりするという論文が報告されている。

 国際自然保護連合(IUCN、本部・スイス)は絶滅のおそれがある生物をまとめた「レッドリスト」で2016年、トナカイを絶滅危惧種に分類した。温暖化などの影響で数が減っていると評価したためだ。

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