小堀龍之

コンテンツ編成本部次長
専門・関心分野環境、エネルギー、科学、医療、ジェンダー

現在の仕事・担当

朝日新聞の編集者として、記事のレイアウトをどうするか、見出しをどうつけるか、日々頭を悩ませています。朝日新聞デジタルに記事を配信することもあります。

バックグラウンド

2000年、朝日新聞社に入社。山口、熊本総局を経て、東京本社科学医療部など。主に科学記者として取材してきました。環境・エネルギーや医療についての取材歴が長く、2011年の福島第一原子力発電所事故直後に現地取材も経験しました。電池やAIといったテクノロジー分野、恐竜など古生物学分野にも関心を持っています。

仕事で大切にしていること

「ニュース離れ」が指摘されるなか、どうすれば読者にわかりやすく、関心を持ってもらえる記事を提供できるのか考え続けています。

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「香川県初の恐竜」はカモノハシ竜 CTで化石を調べて恐竜を特定

 岡山理科大などの研究チームは24日、香川県で見つかった初の恐竜化石が、「カモノハシ竜」とも呼ばれる草食恐竜ハドロサウルス類の骨だったと発表した。  論文が国際学術誌(https://doi.org/10.2517/PR230027)に掲載された。  化石は高さ8センチ、幅約9センチの骨の一部だ。香川県さぬき市の白亜紀カンパニアン期末(約8千万年~約7千万年前)の地層から、同県丸亀市在住の金澤芳廣さんが1986年に見つけた。  大阪市立自然史博物館などの調査で、カモノハシのようなくちばしを持つハドロサウルス類の背骨の可能性があるとされたが、決定的な証拠はなかったという。  今回、岡山理科大の林昭次准教授や東京都市大の中島保寿准教授らのチームは、化石をCTスキャンにかけ、カムイサウルスやニッポノサウルスといったハドロサウルスの仲間の恐竜18種のほか、トリケラトプスなどの角竜、アンキロサウルスの仲間のヨロイ竜など、計34種の化石と比べた。  その結果、肉食恐竜(獣脚類)や、首が長く四本足の恐竜の竜脚類に特徴的な、空気が通る「気囊(きのう)」と呼ばれる器官の入る空間が骨に見られなかった。さらに、骨を前から見るとハート形になる輪郭や、骨の密度などがハドロサウルス類の特徴によく似ていることから特定したという。  研究チームは、今回の化石はカンパニアン期末のハドロサウルス類としてはユーラシア大陸最東端の記録としている。これまで中国やカザフスタンで見つかっていた。  また、化石が見つかった場所からは、海に生息していた大型爬虫(はちゅう)類モササウルスや首長竜の化石も見つかった。  林さんは「香川県が中生代の大型爬虫類を知るうえで重要な産地だとわかった」と話している。

「香川県初の恐竜」はカモノハシ竜 CTで化石を調べて恐竜を特定

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日本最古のウミガメ化石を発見 会社員化石ハンターは「夢のお告げ」

 鹿児島県沖に浮かぶ島の約1億年前の地層から、日本で最古、東アジアでも最も古いウミガメの化石が見つかった。東京都市大学などの研究チームが26日から始まる日本古生物学会で発表する。  発見場所の鹿児島県の旧名薩摩から「サツマムカシウミガメ」という呼び名もつけた。ウミガメが全世界に広がった謎を解き明かす手がかりになるかもしれない。  化石が見つかったのは、鹿児島県長島町の獅子島だ。これまでにも、恐竜と同じ時代に生きていた首長竜や翼竜、アンモナイトなどの化石が発見されている。  見つけたのは、パナソニックに勤める宇都宮聡さん。会社員として働きつつ、恐竜などの化石採集を続け、「化石ハンター」として知られる。  2020年、海岸の地層で「ノジュール」と呼ばれる石灰質の丸い石の塊を発見した。ノジュールは化石の周りにできることがあるため、割ってみると骨の断面が見えた。  宇都宮さんから連絡を受けた東京都市大の中島保寿准教授が石にCTスキャンをかけたところ、首の骨のような化石が含まれていることがわかった。化石を慎重に削り出すクリーニング作業を進めた結果、大きさ約2・5センチの首の骨と、幅約4センチの甲羅の化石が見つかった。  甲羅の形などの特徴から、生きていたときは、甲羅の大きさが70センチかそれ以上になるウミガメの化石と考えられるという。見つかった甲羅はおなか側の一部で、首に近い前方が薄く板のように広がった特徴などが現代のウミガメや、絶滅した古代のウミガメ「デスマトケリス」によく似ているという。  中島さんによれば、サツマムカシウミガメの発見は、初期のウミガメが北太平洋にいたことを示す数少ない証拠であり、ウミガメがどのように世界に広がっていったかの過程をたどるうえで重要な資料になるという。 ■化石を見つける夢を見て…  ウミガメは、恐竜が生きていた白亜紀に海で生活するようになったカメの仲間だ。世界最古のウミガメ化石は、南米コロンビアで約1億3500万年前の白亜紀前期の地層から見つかっている。ウミガメは白亜紀後期に多様化し、全世界の海に広がった。  日本では、北海道の約9千万年前の白亜紀後期の地層などから見つかっている。だが、それより古いウミガメの化石は、欧州や南米など限られた地域でしか見つかっていなかった。  今回の化石を見つけた宇都宮さんは働きながら数々の古生物の化石を見つけてきたことから「化石ハンター」として知られ、以前にも獅子島で化石を発見している。  04年には、島の地層から九州初の首長竜の化石を見つけた。エラスモサウルス類とみられる化石で、宇都宮さんの名前からサツマウツノミヤリュウという通称で呼ばれている。20年には、翼竜の化石、21年には、恐竜化石を含む岩石の層「ボーンベッド」も発見している。  今回のウミガメ化石の発見は、許可を得た数日間の調査の最終日だったという。  前夜に化石を見つける夢を見て、気になって早起きして海岸を歩いていたところ、まわりの地層から少し盛り上がった怪しい部分を見つけ、ノジュールに気付いたという。少し割ってみると、海綿状の骨の断面のようなものが見えたため、新聞紙に包んで持ち帰った。  素人目には、海岸にあるほかの石と見分けにくい。だが、宇都宮さんは「化石採集のときは、シャドーボクシングのように採集状況の思考実験を繰り返すので、その影響でしょうか。夢で見た状況とほとんど同じ場所、状況で化石がでてきました。ウミガメのお告げのような発見で不思議な体験でした」と発見の様子を振り返った。

日本最古のウミガメ化石を発見 会社員化石ハンターは「夢のお告げ」

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歯むき出しのティラノサウルス間違い? 恐竜映画のイメージ覆す研究

 映画「ジュラシック・パーク」や続編「ジュラシック・ワールド」に登場するような、恐ろしげな歯をむき出しにしたティラノサウルスはいなかった――。こんな研究成果を、米国やカナダなどの研究チームが科学誌サイエンスに発表した。鋭い歯は「唇」で覆われていたと考えられるという。  ティラノサウルスは白亜紀末期(約6600万年前)に現在の北米にいた大型の肉食恐竜だ。あごの骨に埋まった部分も含め、長さ30センチ以上の歯があったことがわかっている。映画などでは、唇のないワニのように、歯がむき出しの姿で再現されることも多い。  ただし、ワニのように歯がむき出しだと、歯が乾燥してダメージを受けやすくなってしまう。それなのに、化石の歯にはダメージが目立たなかった。  そこで、研究チームはトカゲのように歯が唇で覆われていたのではないかと考え、検証した。  ティラノサウルスやゴルゴサウルス、ベロキラプトルなどの獣脚類と呼ばれる肉食恐竜の化石と、コモドオオトカゲやミズオオトカゲなど現生のトカゲを比較した。すると、頭蓋骨(ずがいこつ)の長さに対する歯の長さの割合はあまり変わらず、肉食恐竜の歯が特に長いわけではなかった。  さらに、ティラノサウルスなどのあごの化石を調べたところ、神経や血液が通っていた穴の形状は、ワニよりもトカゲに似ていた。そこで研究チームは、ティラノサウルスなど獣脚類の仲間の歯が、トカゲのように唇で覆われていたと結論付けた。論文は科学誌のサイト(https://doi.org/10.1126/science.abo7877)で見られる。  国立科学博物館の對比地(ついひじ)孝亘研究主幹は「過去にも同様な議論はあるにはあったものの、これまで当然のように受け入れられていた、ワニ型の上あごの歯が露出している復元について、説得力のあるデータで否定的な考察をしている点で興味深い。今後の恐竜の生物学の研究にどのくらいの影響を与えるかについては未知数であるものの、今後映像や画像などでこれらの恐竜類の生体復元を行う上では大きな影響を及ぼすと考えられる」としている。  なぜ、ティラノサウルスなどの肉食恐竜は映像やイラストの中で、歯をむき出しにした姿が当たり前になっていったのだろうか。  研究チームのひとり、英ポーツマス大学のマーク・ウィットン博士によれば、肉食恐竜の想像図に唇がなく、歯がむき出しの姿が目立つようになったのは、1980年代から1990年代にかけてのことだ。それまではトカゲのような姿とワニのような姿を行ったり来たりしていた。  ただ、この時期に何か特別な発見があったわけではなく、たけだけしい姿が美的に好まれるようになったためと考えられる。1993年に公開された映画ジュラシック・パークでは、CGやロボットで生き生きとした恐竜の姿が再現され、歯をむき出しにしたティラノサウルスが登場した。  こうしたイメージが映画や「ウォーキング with ダイナソー」などのドキュメンタリーで繰り返し取りあげられ、大衆文化に根付いていったという。  ウィットン博士は「ジュラシック・パークの象徴であるT・レックス(ティラノサウルス)を含め、私たちが好きな恐竜の描写の多くが間違っているのです」とコメントしている。  では、長い歯をむき出しにした肉食恐竜は本当にいなかったのだろうか。  現在でも、水辺にすむワニは歯がむき出しになっている。ティラノサウルスがいた白亜紀にはアフリカの水辺に、ワニのようなあごを持つ肉食恐竜スピノサウルスが暮らしていた。全長は推定15メートルで、約13メートルのティラノサウルスを超えるとされる大型恐竜だ。2001年に公開された映画「ジュラシック・パーク3」では、歯をむき出しにしてティラノサウルスと争っている。  研究チームは、サーベルタイガーのような肉食の哺乳類や海にすむ爬虫類(はちゅうるい)の仲間など、長い歯をむき出しにした絶滅生物もいたことから「今回の研究で、歯をむき出しにした恐竜がいたことが否定されるわけではない」と指摘している。

歯むき出しのティラノサウルス間違い? 恐竜映画のイメージ覆す研究
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