偏愛の本好き集まれ 「渋谷○○書店」管理人が語る新型古書店の未来

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聞き手・井上恵一朗

 東京・渋谷駅直結の高層複合施設・渋谷ヒカリエに今秋、オープンした「渋谷○○書店」。「ひと箱の本屋」が集まり、店番も共同で担うシェア型本屋だ。これまでも新しい文化の発信地となってきた渋谷の中心地での出店。同店の発起人で管理人を務める横石崇さん(43)に、本屋の未来を聞いた。

よこいし・たかし

多摩美術大学卒。ブランド開発や組織開発、社会変革を手がけるプロジェクトプロデューサー。著書に「これからの僕らの働き方」(早川書房)など

 渋谷には本屋がたくさんありました。そんな街が好きだったのに、どんどん姿を消していった。コロナ禍の中で渋谷に人が来なくなり、「空洞化」が起きていた時期、ヒカリエで「何か面白いことを仕掛けたい」ということで、本屋はどうかと声がかかりました。

 本がある場所をみんなで運営するシェア型本屋の仕組みには注目していたものの、家賃の高い一等地での事例はなかった。渋谷○○書店では、ひと箱(37センチ四方)の賃料を月5千円ほどに設定して130棚まで置けるようにし、店主となる「棚主」にレンタルしています。

シェア型本屋

本棚を定額で借りた人が本を持ち寄って売るスタイルで、店内には箱形の本棚がずらりと並ぶ。「棚貸し本屋」「共同型書店」などとも呼ばれ、ネット書店の台頭で街中の書店が減るなか、全国各地にできている。本棚の賃料が主な収入源で安定的な経営が期待できるメリットがある。「一日店長」となって、店番を棚の借り主が共同で担う店もある

 棚主の募集時のテーマは「偏愛」。渋谷は偏愛が集まる街、偏愛に寛容な街。そういう人たちに支えられ、「偏愛エコノミー」をここで生み出したい、そんな思いがありました。

 不安はありました。コロナだし、渋谷は住民というより、働く人と遊ぶ人が多い街。棚を持ってまで本をやりたい人がいるのか? と。でも偏愛なるテーマの本が集まってきて、それを見て出店希望者がさらに増え、開店1カ月で80棚が埋まりました。今は募集を一時止めています。

 シェア型本屋では、棚主は自分で本を持ってこないといけないし、店番だってある。店番をやるとお金がもらえるのかと聞かれることもしょっちゅうです。そういうめんどうなことをやってでも、この場所を一緒に盛り上げたいと思ってくれる人が80人いる。すごく心強いですよね。

■「好きは力」…

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この記事を書いた人
井上恵一朗
デジタル企画報道部次長
専門・関心分野
街ダネ、主に事件を題材にしたルポ