拳で人を傷つけ、少年院にも入った どん底からはい出た20歳の挑戦

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佐藤祐生
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 道を踏み外しても、人は立ち直れる。

 そう教えてくれる青年がいる。

 黒田斗真(とうま)、20歳。「K―1ジム心斎橋チームレパード」(大阪)に所属するK―1選手だ。

 5月30日。黒田は横浜武道館横浜市)で行われた「K―1バンタム級(53キロ以下)日本最強決定トーナメント」に出た。

 下馬評は決して高くなかったが、決勝に進み、優勝候補筆頭の壬生狼(みぶろ)一輝=力道場静岡=に挑んだ。

 開始早々、得意の左ストレートでその顔を打ち抜き、マットに沈めた。

 わずか31秒でのKO勝ち。一人の若者が、暗闇からはい上がった瞬間だった。

 黒田は大阪府八尾市出身。格闘技好きの父・進さんの影響で、小学3年の時、グローブ空手のジム「隆拳(りゅうけん)塾」(現所属ジムの前身)に通い始めた。2歳上の兄・勇斗さんも一緒だった。

 進さんは厳しかった。試合に勝っても負けても怒られ、ジムで練習が終わった後も自宅での特訓が続いた。

 「あの頃は練習が嫌で、格闘技もそんなに好きではなかった」

 黒田はそう笑う。通い始めて1年も経たないうちに、進さんは肝臓の病気で亡くなった。その後も勇斗さんとともに通い続けた。

 中学生になると、だんだんジムに足が向かなくなった。学校にもまともに行かなくなった。

 日夜、仲間とつるんで不良行為を繰り返した。格闘技を習っている以上、ふるってはならないはずの拳で人を傷つけ、ジムを破門された。

 母・珠美さん(50)は振り返る。

 「お父さんが生きていれば…

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    竹田竜世
    (朝日新聞スポーツ部次長=主に高校野球)
    2021年12月1日12時45分 投稿
    【視点】

     「過去は変えられないけど、未来は変えられる」    「人は変えられないけど、自分は変えられる」  よく言われることですが、原稿を読みながらそんな言葉が何度も浮かんできました。  この記事を書いた記者は武道を習っていたそうで

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