認知症の高額な薬、承認なるか 「コロナと重なる時期、運命的」
アルツハイマー病の新しいタイプの薬「アデュカヌマブ」が日本で承認されるのか、注目が集まっています。話題の一つが値段の高さ。薬の承認や使用にどのようなハードルがあり、日本社会にどんな影響をもたらすのか。医療経済を専門とする五十嵐中(あたる)・横浜市立大准教授に話を聞きました。五十嵐さんは「コロナと時期が重なるのは運命的」と言います。
今回は「第4波」
――アデュカヌマブは認知症の約7割を占めるアルツハイマー病の薬。迅速承認された米国では、日本円に換算して年間600万円を超す高い価格がつき、話題になっています。
高額薬剤の議論の波は、今回が「第4波」といえます。
がんの薬オプジーボや肝炎の薬ソバルディとハーボニーが「1波」、1回3千万円を超す白血病の薬キムリアが「2波」、1回約1億6千万円の脊髄(せきずい)性筋萎縮症の薬ゾルゲンスマが「3波」でした。
「2波」「3波」の高額薬剤は、対象患者数がきわめて少ない病気の薬でした。
アデュカヌマブがこれまでと違うのは、国内に約600万人もいる認知症の薬ということです。
日本で承認され、仮に米国の価格の約3分の1となる200万円の価格がついたとします。
もし、10%の60万人が使えば、年間1兆円を超しますが、後で説明する三つの理由から、患者数はよりしぼりこまれるとみられ、この数字は非現実的です。
それでも、600万人の1%が対象となったとすれば6万人、単純計算で年間1200億円になります。
年間売り上げが1千億円を超す薬は数品目ですから、十分に大きな金額です。
――米国価格の3分の1とは、どこからでてきた数字ですか?
米国の価格と日本の価格との間に、明確な基準があるわけではありません。
厚生労働省がまとめた資料によると、日本と米国で3年間につけられた約100品目の価格を比較すると、平均して米国の価格は日本の3.4倍でした。
議論大詰め、運命的
――新型コロナウイルス感染症が流行した時期にアデュカヌマブの議論が大詰めを迎えました。
ある意味、運命的です。
これまでは、薬の金額につい…