和歌山県設立期の古文書を展示、150年記念
和歌山県の設立から22日で150年を迎えるのに合わせ、紀州徳川家の家老一族が残した当時の文書が県立図書館(和歌山市西高松1丁目)で展示されている。紀州藩から和歌山県へ移行し、県の基盤が築かれていく過程を感じることができる。12月28日まで。
展示されているのは、紀州徳川家で代々家老を務めた戸田家が記した「戸田家文書」。1869(明治2)年の版籍奉還で当時の藩主だった徳川茂承が和歌山藩知事となり、71(同4)年の廃藩置県を経て、和歌山県が誕生する様子などが記されている。
当時は通信手段がなかったため、複数人で文書を回覧し、読み終えたら署名して次の人へ送る「廻文(まわしぶみ)」で情報を伝えていたという。戸田家文書の中には、71年11月22日付で明治政府から発せられた和歌山県創立の布告の廻文が残っていて、展示では現物を見ることができる。
県は1970年ごろに戸田家から文書の寄贈を受け、図書館で保管していた。館総務課の松本泰明さんは「初代の県庁舎が火災で焼失し、当時の公文書はほとんど残っていない。貴重な史料だ」と話す。
節目に合わせ、和歌山の歴史を学べる書籍の特設コーナーも館内に設けている。和歌山県黎明(れいめい)期の記録集や、当時の偉人の生涯を描いた小説などが並ぶ。
主任司書の藤田達子さんのおすすめは、「城下町和歌山夜ばなし」(三尾功著)。江戸時代から戦後まで、和歌山市や和歌山城にまつわる逸話をまとめた1冊だ。幕末や明治維新のころの話も多く、坂本龍馬が勝海舟と共に視察で和歌山を訪れた際、滞在した宿の風呂を壊したエピソードなどが紹介されている。
藤田さんは「混乱の中で活躍し、時代を前に進めていった人たちがいる。藩から県への過渡期の時代に思いをはせて」と話す。
図書館は平日の午前9時~午後7時、土日祝の午前9時~午後6時。毎週月曜と12月9日は休館…