軽石に備え、神津島と御蔵島にフェンス 伊豆諸島に本格漂着の見通し

釆沢嘉高 吉沢英将 赤田康和 中山由美
【動画】軽石の本格的な漂着に備え、伊豆諸島・神津島の港にオイルフェンスが設置された=依知川和大撮影
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 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」の噴火で生じた軽石の本格的な漂着に備え、東京都は18日、神津島と御蔵島の2港にオイルフェンスを設置した。ほかの島についても、漂流状況をみながら設置を検討するという。

 今回設置したのは、神津島港と御蔵島港の漁船が停泊するエリアの入り口部分。軽石が港内に入り込むことや漁業に影響が出ることを防ぐためで、神津島は約60メートル、御蔵島は約40メートルのフェンスで入り口をふさぐようにした。神津島港の漁船は事前に別の港に移動させたが御蔵島には港が一つしかなく、フェンスを開け閉めして対応する。

 都によると、都内では今月9日以降、神津島と御蔵島を含め、伊豆大島三宅島など計7島の港や沖合で軽石の漂着・漂流が確認されている。いずれも少量で、大きさは1ミリ~10センチ程度だという。今のところ船舶の運航などへの影響は報告されていない。

 海洋研究開発機構神奈川県横須賀市)が16日に公表した予測では、18日ごろには三宅島など伊豆諸島に本格的に漂着し始め、一時的に滞留した後、下旬にかけ通過する見通し。

 気象庁によると、都心から南へ約1300キロにある福徳岡ノ場の噴火は8月13日に発生。15日まで続いたが、その後は確認されていない。

 ただ、海上保安庁が今月11日に上空から観測した際、付近で広く海水が変色し、軽石とみられる浮遊物も確認された。気象庁の担当者は「噴火こそないものの海底内部での活発な火山活動は継続していると考えられる」と話す。

 神津島でフェンスを設置した神津島港は島の西側にある。漁船は秋から冬にかけて東側の三浦漁港を使うため現時点で影響はないが、「三浦漁港にフェンスを設置する時は休漁にせざるをえない」と神津島漁協の前田好樹・統括課長は話す。「名産のキンメダイは脂がのっておいしくなる季節。軽石が来ないことを祈っている」

 神津島の漁師・浜川一生さん(43)は、18日未明に三浦漁港を出て昼に帰港する際、漁港周辺に軽石が浮いているのを見た。「昼ならよけられるが、夜は見えない。塊に突っ込むのが怖いが、様子をみながら漁は続ける。なるようにしかならないからね。しばらくの辛抱かな」。浜川さんの仲間の船はこの日、エンジン冷却用の海水取り入れ口に付けたフィルターに小石がつまり、早めに漁を切り上げたという。

 御蔵島港では普段、海が荒れなければ10隻ほどが漁に出ている。御蔵島漁協の担当者は「軽石が漂着すれば休漁せざるを得ない。冬にかけてキハダマグロの値段が上がってくる季節なのに……。不安でいっぱいだ」と話す。(釆沢嘉高、吉沢英将、赤田康和、中山由美

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