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日大理事長、1億円超の所得隠しか 故意の疑いも 特捜部が捜査

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 日本大学板橋病院をめぐる背任事件で、日大の田中英寿理事長(74)が、起訴された医療法人前理事長から受け取った現金など、過去3年間で計1億円超の所得を税務申告していない疑いがあることが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は意図的に所得を隠した所得税法違反にあたる可能性もあるとみて調べている模様だ。

 日大に計約4億2千万円の損害を与えたとされる背任事件では、田中氏側近の日大元理事・井ノ口忠男被告(64)と医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」(大阪市)の前理事長・籔本雅巳被告(61)らが起訴された。

 関係者によると、井ノ口被告は起訴内容となった板橋病院関連の取引をめぐり、利益を得た籔本被告からの「お礼」として計7千万円が田中夫妻に渡ったと供述。建て替え工事の設計業者選定で2020年に計4千万円、医療機器などの調達で21年に計3千万円を提供したと説明した。このほかにも籔本被告は田中氏側に、誕生日や理事長再任の祝い金を渡したほか、日大関係の他の取引でも謝礼を出してきたとみられるという。

 田中氏はこれらの現金のうち、申告期限を過ぎた2020年以前の3年間の税務申告で計1億円超を所得として申告していない疑いがあるという。田中氏は過去の税務調査で数千万円の申告漏れを指摘され、修正申告していた。特捜部はこの経緯も重視し、申告の必要性を認識していたのに故意に申告しなかった疑いがあるとみている模様だ。

 特捜部が今年9~10月に田中氏宅を捜索すると、1億数千万円の現金が保管されていた。井ノ口被告が背任事件の取引で用意させた1千万円を束ねていた銀行の帯封が見つかったことも判明している。

 背任罪で両被告を16日に追起訴した特捜部は田中氏について、全体の仕組みまで認識していたとは言えないと判断し、共犯としての立件は見送っている。

 朝日新聞の取材に日大広報課は、両被告から田中氏への現金提供は「ないと聞いている」と回答。田中氏宅にあった現金は「1億~2億円で、(妻が経営する)ちゃんこ屋の利益や理事長の役員報酬などの個人的な財産」と説明し、税務申告は「適切に行っていると聞いている」と答えた。

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