東京機械製作所の買収防衛策、なぜ認められたか 判断のポイント整理

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鈴木康朗
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 輪転機最大手の東京機械製作所買収防衛策について、東京地裁(林史高裁判長)は29日、買収側の投資会社が申し立てていた差し止めの仮処分を却下した。東京機械製作所は22日の臨時株主総会で、買収側の議決権を制限したうえで、防衛策を可決していた。防衛側に有利な司法判断が出たことで、今後の企業買収に影響を与えそうだ。

 投資会社のアジア開発キャピタル(東証2部上場)は却下を不服として、近く東京高裁即時抗告する方針だ。アジア社は完全子会社の「アジアインベストメントファンド」を通じて東京機械製作所の株式を買い集め、議決権の約4割を取得していた。

 林裁判長は、アジア社による急速な株式の買い集めは「強圧性」があり、ほかの株主らが適切な判断をするための情報と時間が確保できない可能性があるとした。会社や株主の利益が害されるかどうか株主自身が判断するため、議決権を制限することは不合理ではないと結論づけた。

 林裁判長は、アジア社などの利害関係者を除き、出席した株主の約79%が買収防衛策の発動に賛成したことも指摘。アジア社を除いた株主らが、株主の共同の利益が害されると判断したものといえると認定した。

 東京機械製作所の経営陣は、買収防衛策の導入を取締役会で8月に決めた。既存の株主に新株予約権を無償で与え、アジア社の保有割合を下げるものだ。経営陣は臨時株主総会で「特定の利害を有する株主の議決権を除くのが合理的だ」として、アジア社の議決権を認めなかった。アジア社などを除く株主のうち、議決権を行使した株主の約79%が賛成した。

 東京機械製作所は29日、「当社の主張を認める妥当な判断と考える。新株予約権の無償割り当てを予定どおり実施する」とのコメントを出した。防衛策は11月19日に発動する予定だ。

 アジア社は、議決権を認めないことは1株あたりの権利は等しいとする「株主平等の原則」に違反し、株主総会の手続きは不適切だなどと主張していた。

 アジア社は29日、「一部株主のみの意思を確認しただけで新株予約権の無償割り当てを許容する判断をしたことは、証券取引市場の透明性を害し、資本多数決原理の根本を揺るがし、会社法制への信頼を害する」とのコメントを出した。

敵対的買収を大きく制約

 今回の東京地裁の判断は、敵対的な企業買収を大きく制約するものだ。買収側以外の従来の株主の権利が重視され、経営陣は防衛策を実施しやすくなる。ほかの株主が知らないうちに大量の株式を買って、一気に経営権を握ることは難しくなりそうだ。

 買収側のアジア社が市場で株…

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