第2回「ガラスの天井」はどう破られたか 女性議員が4割超の台湾から学ぶ

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台湾からのヒント オードリー・タンを育んだ社会②

 台湾の国会にあたる立法院は、女性議員の割合が4割を超える。2008年の総選挙から、全体の約3割を占める比例区の議席を強制的に男女同数とする「クオータ制」を採り入れてきた影響だ。女性たちは相次いで政界の「ガラスの天井」をやぶり、初の女性総統も誕生した。日本で進まぬこの制度を、台湾の人々はどう実現させ、政治や社会にはどんな変化が起きたのか。

オードリー・タン氏の言葉

多様化した社会の最大の長所は、個人の運命が性別によって決められないことです。ある人が社会にどんな貢献ができるかは、長い時間をかけて考え、ようやく答えが見いだせます。でも、ある人の性によって、別の性の人なら取り組めることを経験できなくさせてしまったら、その人は一生、自らの半分の可能性を制限されることになります。自分とは異なる性の人に対する理解が限られてしまうのです。そんな社会で生み出される政策は、多様な人からなる社会の諸問題を解決できません(朝日新聞のインタビューで)

 「クオータ制がなければ、私は議員になれなかっただろうと思います」

 夫婦別姓の実現など女性の権利を広げる運動に1980年代初めからかわってきた弁護士で、元立法委員(国会議員)の尤美女さんは、12年に初当選した時の心境をこう振り返った。台湾の法曹界で抜群の実績と知名度を誇り、当時は野党だったリベラル系の民進党の比例区候補として選挙に立っていた。

 立法院(定数113)は、小選挙区の79議席(先住民枠6含む)と全土を一区とする比例区の34議席からなる。有権者は比例区の投票で政党名のみを記すことができ、政党ごとに獲得した票数にもとづいて、名簿上位の候補者から当選していく。この時、当選者の男女比を同数とすることが定められている。

飲酒した後に本会議に現れる男性議員も…

 民進党は尤さんが出た12年の選挙で、比例区の13議席を得た。尤さんの順位は11位。女性では6番目で、当選者の中では下から2人目だった。ただ、尤さんは、「民進党が作った当初の候補者名簿はひどい内容でした」と言う。「比例区で当選の確率が高くなる名簿の上位は党内の各派閥で取り合いになり、候補者の専門性よりも、政治的な思惑が重視されていたためです」。尤さんによると、名簿を見た党主席の蔡英文氏が最終的に順位をかえさせたという。この選挙では、現在の行政院長(首相)や、駐日代表、立法院長(国会議長)ら党内の派閥長老らも名簿に載っていたが、クオータ制の影響でいずれも落選した。

 尤さんが政界を目指したのは、長年取り組んできた台湾社会の男女格差解消や性的少数者の保護を進めたかったためだ。しかし、待っていたのは、政界の「悪習」に対する驚きの連続だった。

 本会議などへの議員の出席率…

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