少年・羽生結弦に「先生の悪口でもいいよ」 コーチが勧めた日記
山田真実コーチインタビュー(前編)
フィギュアスケートの羽生結弦(26)=ANA=は幼少期から才能の片鱗(へんりん)を見せていた。4歳から小学2年生までの羽生のコーチを務めた山田真実さん(47)は「いずれ日本を代表する選手になる」と予感したという。いきなり跳んだ1回転半ジャンプ、当時から秀でていた表情の作り方、何でもいいからと書かせた日記……。山田さんに思い出を振り返ってもらった。
毎週水曜日にフィギュアスケートにまつわる話題をお届けします。
――羽生選手がスケートを始めた時のことを教えてください。
仙台市のリンクで結弦のお姉ちゃんを教えていたのですが、その間、リンクサイドでずっと走り回っているやんちゃな子が結弦でした。当時は4歳。「そんなに動きたいんだったらスケート教室に入ってみたら」とお母さんと結弦に言ったのが始まりです。
――初めて滑らせた時はどんな様子でしたか?
普通、初めての子はハイハイの姿勢になって、氷に慣れさせてからゆっくり立つのが基本なんです。
ただ、彼をそれをぶっ飛ばしてリンクインしました。スケート靴で、走ったまま氷上に入っていったんです。「危ない」と思ったんだけど、そのままリンクの中央まで走っていって、バランスを崩して転んで頭を打ったんです。これはまずいと思って、あわてて、駆け寄って、「大丈夫」って声をかけたら、スラーッと立ち上がったんです。普通じゃないですよね。その時点で、すごいなと思いました。
――苦労した点もあったようですね。
そうやって走り回っちゃうからとにかく落ち着かせて「止まりなさい」と。そこから片足で滑る。バランスを取って滑るっていうスケートの基本を教えていきました。でも集中力が続かないんです。だから、その時のイメージは「結弦って大変」って感じでしたね。
――才能を感じた瞬間はどんな時ですか?
彼が幼稚園の年長くらいで、1回転ジャンプを跳べた時に、「シングルアクセル(1回転半)をやってごらん」って言ったんです。
1回転から1回転半は早い子でも2、3カ月。たいていは半年から1年くらいかかります。なので、ちょっと面白がって言っただけだったのですが、彼は跳んだんです。着氷で転んだのですが、ちゃんと1回転半回りました。「なんだ。これは」と。教えていないから、軸はぐちゃぐちゃ。でも運動能力だけで回ってしまったんです。
――演技力は当時から光っていましたか?
今の結弦を見ていると、自分…
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