洋上風力発電はクリーンか 国内初の工事現場、海中に響く音を調べた

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高橋杏璃
【動画】進む洋上風発の建設工事 海中で聞こえるのはどんな音?=松村北斗、高橋杏璃撮影
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 脱炭素社会の実現に向け、クリーンなエネルギーとして洋上風力発電が脚光を浴びている。期待の一方で、建設による海の生き物への影響はないのだろうか。国内初の大型洋上風力発電の基礎工事が進む秋田港(秋田市)の沖合で、海中でどう音が響いているか調べてみた。

ドーン、ドーン 洋上に鈍い金属音

 ドーン、ドーン。一定の間隔を空けながら、鈍い金属音が洋上に響く。8月19日午後、秋田港のマリーナ秋田付近の防波堤から数百メートルの所で、作業船が油圧ハンマーで海底に基礎杭を打ち込みはじめた。杭は最大で重さ500トンを超え、直径117メートル、高さ約150メートルもの大型風車を支える。

 事業者の秋田洋上風力発電は秋田港で13基、能代港で20基の風車を建てる計画だ。能代港では杭打ちが終わり、秋田港も2本を残すのみ(16日現在)。来年末の運転開始に向け、工事が進む。

 杭打ちの音の海中での響き方を調べるため、あきた鳥の会のメンバー船木信一さん(62)が操船するボートに同乗させてもらい、海に出た。船木さんは定期的に秋田港周辺の海の様子を観察し、工事が生き物に与える影響を調べている。

 防波堤の先端付近、作業船から約1・5キロの地点(調査地点①)に向かった。ボート上では花火が上がる時のような大きな音が聞こえる。

 同じ場所で水深15メートルほどの海底までカメラを沈めてみた。引き上げて動画を確認すると、鋭い、はっきりとした打設音が、防水カバー越しでも録音されていた。動画には小さなアジの群れが移動していく様子も映っていた。音が響くと群れが急に移動しているようにも見える。

 ボートに設置された魚群探知機には、杭打ちが始まる前まで魚影が海底から盛り上がるように映っていたが、音が響き始めると海底付近にへばりつくように、映像に変化が見られた。

 ただ、アジの群れは、カメラの方向が急に変わったことで群れが動いたように見えた可能性もある。魚探の映像も潮流の変化などほかの要因も考えられる。「これだけじゃ分からないね」と船木さんは言った。

 離れた場所でも聞こえるのだ…

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    蟹江憲史
    (慶應義塾大学大学院教授)
    2021年9月18日1時22分 投稿
    【視点】

     洋上風力発電は、日本の状況に見合った再生可能エネルギー促進策として期待されています。2050年脱炭素を実現するには必須の発電所だと言えます。  一方で、新しいことを始める際には、これまでになかった懸念が示されることもあります。これに

    …続きを読む