玄人より素人の方がクリエイティブ? 東大が実験「創作活動で活躍」
専門知識が多い人より少ない人の方が、自由で優れたアイデアを生み出して活躍できるかもしれない。創作活動の一部では、そんな傾向があることを、東京大のチームが科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。チームは、一つのことに集中せず、ほかの事柄も含めて広く考えることが重要だとしている。
植田一博教授(認知科学)らは、ステレオやパソコンなどに使われるスピーカーを題材に、参加者200人に工学や音響学の専門知識を尋ね、さらに本人所有のスピーカーを写真に撮ってもらった。新機能のアイデアも考えてもらった。
写真を画像処理して注意がどこに向いたか確かめたり、アイデアについて音響技術や情報工学などの専門家やコンピューターの自然言語処理技術で評価してもらったりすると、専門知識が多い人ほど細部を大きく撮る「集中的な注意配分パターン」を持つ傾向があった。新機能のアイデアについても、「思いつかない」だったり、小型化や高品質化のような従来型の発想が目立ったりした。統計的に分析すると、集中的な注意がアイデアの質にネガティブな影響を与えたとみられた。
一方、専門知識の少ない人は、「本や雑誌に内蔵されたスピーカー」など、専門家が相対的に高く評価するアイデアが目立った。写真も周辺が見えるよう引いた位置から撮影する「分散的な注意配分パターン」の傾向があり、アイデアの質にポジティブな影響を与えたとみられるという。
専門知識が多いと視野が狭まってしまい、時には、素人の方が広い視野で自由な発想ができるケースがありそうだ。植田教授は「専門知識はもちろん重要だが、最初のアイデアを出す部分では、専門知識が少ない人も活躍できるかもしれない」と話している。
ネット通販大手のアマゾンで出品されているスピーカーのレビュー20万件以上でも意見の質を分析したところ、実験と同じような傾向がみられたという。論文の概要は科学誌のウェブサイト(https://www.nature.com/articles/s41598-021-97215-5)で読める…
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