歴史家・社会運動家の色川大吉さん死去 民衆史の研究をリード

 自由民権運動などの民衆史の研究をリードした歴史家・社会運動家で東京経済大名誉教授の色川大吉(いろかわ・だいきち)さんが7日、老衰で死去した。96歳だった。故人の遺志で葬儀は行わない。

 東京帝国大の学生時代に学徒出陣し、海軍航空隊へ。戦後、その経験から国家の枠に収まらない民衆の歴史の構築をめざして研究を進めた。東京・多摩地区の旧家を訪ねて古文書を読み解き、多摩史研究会を結成して市民自らの手による地方史研究を進めた。

 1964年刊行の「明治精神史」は民衆史研究の先駆けとなり、68年に旧家の土蔵から発見した「五日市憲法草案」は、大日本帝国憲法(明治憲法)制定以前に民間で作られた「草の根の憲法案」として大きな反響を呼んだ。名もない民衆の視点で描く人間臭い歴史は「色川史学」と呼ばれて多くの読者に支持され、鹿野政直・早稲田大名誉教授や安丸良夫・一橋大名誉教授(故人)とともに民衆史研究の先頭に立った。

 75年刊の「ある昭和史 自分史の試み」で「自分史」を提唱して毎日出版文化賞を受けるなど、多数の著作を残した。水俣病の実態を解明しようと不知火海総合学術調査団を組織して団長をつとめ、作家の故・小田実さんらと「日本はこれでいいのか市民連合」を立ち上げて代表世話人をつとめるなど幅広い社会活動も繰り広げた。

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