第2回遺体袋の左手、薬指に光るエメラルド NY検視官が向き合う9・11
ニューヨーク=藤原学思
あれから20年 私はここにいる 米同時多発テロ②
空かと思うほど軽いプラスチックの遺体袋には、左手が入っていた。
切断され、4本しか指がない手は美しかった。「マネキンのように」。爪には赤いマニキュアが塗られ、細く、長い薬指に、3カラットのエメラルドが光っていた。
2001年9月11日にあった米同時多発テロの直後からニューヨーク(NY)市検視局の検視官、石井朝子さん(64)は、現場近くのテントで検視作業に当たっていた。
運ばれてくる遺体は徐々に小さくなり、女性の左手が作業台に載せられたのは、テロの2週間後。その場にいた誰もが息をのみ、それ以上、その日の検視作業は続けられなかった。
「手は、あのときに起きたこ…