第1回電話を切った8分後、墜落した旅客機 9・11犯人に立ち向かった夫
あれから20年 私はここにいる 米同時多発テロ①
20年前の9月11日は、3歳だった三女が初めて幼稚園に行く日で、5歳の双子の姉たちも興奮していて、朝から騒がしかった。
今年、三女は大学を卒業し、家を出た。これで姉妹3人全員が独立した。一家は初めて、父親の、夫の命日に、事件現場を訪れる。
化粧品会社を営むディーナ・バーネットさん(57)は度々、自宅のアーカンソー州から6時間半車を運転し、テキサス州ダラスを訪れる。実家を離れた娘たちに会うためだ。
「やっぱり寂しくて。だからいつも会いにいく。私たち、ほんとうに仲が良いの。この前は、4人のユニットみたいって言われて、みんなで笑っちゃった」
一緒に夕食を取り、ホテルに2部屋とって泊まる。でも、1人足りない。
そのひとには、会いたくても、もう会えない。
20年前――。
夫からの着信 「やつらはコックピットにいる」
当時カリフォルニア州に住んでいたディーナさんは不在の夫のローブを羽織り、娘たちの朝食にシナモンワッフルを作っていた。
リビングのテレビが、世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだと告げる。「管制塔がミスしたのだろうか」。ただ、その考えを吹き飛ばすかのように、別の1機も衝突した。
医療機器メーカーに勤めていた夫のトムさん(当時38)は出張中で、ニューヨークにいるはずだった。「近くにいなければいいけど」。そんなことを考え、義理の母と電話で話していると、着信が入った。米東部時間午前9時半ごろ、トムさんの番号からだった。
「大丈夫?」
「いや、大丈夫じゃない。ハイジャックされた飛行機に乗っている」
国際テロ組織アルカイダがハ…
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