コロナ感染の妊婦、入院できず自宅で出産 新生児が死亡
妊娠中に新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養していた千葉県柏市の妊娠29週(8カ月)の30代女性が、入院先が見つからないまま、医師ら不在の状態で自宅での出産を余儀なくされ、新生児が死亡していたことがわかった。感染の急拡大で病床が逼迫(ひっぱく)するなか、コロナに感染した妊産婦の受け入れ態勢の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなった。
19日の柏市の発表によると、女性は11日に感染が確認された。当初は軽症扱いだったが、14日夜からせきなど中等症の症状があらわれ、市は15、16日に一般のコロナ患者として入院先を探したが、病床逼迫などから受け入れ先が見つからなかったという。千葉県では「入院優先度判断スコア」を導入し、緊急度が高い人から入院してもらっているが、この女性は、加点対象となる「妊娠36週以降」ではなかった。
17日朝、女性は腹部の張りを訴え、市は今度は妊婦としての入院先を女性のかかりつけ医や県とともに探した。しかし、感染を理由に複数の医療機関に断られたという。同日午後には出血があり、午後5時15分ごろ、自宅で出産。119番通報を受けて救急隊が到着したところ、生まれた男児は心肺停止状態で、市内の大学病院に運ばれたが死亡が確認された。女性はコロナの中等症で入院しているという。
19日に会見した柏市保健所の担当者は「コロナを診療し、さらに産婦人科も診療できる医師、医療機関は限られる。早産などのリスクのある妊婦さんを診療できる医療機関は特に少なくなる。今回のケースはいくつもの課題が重なってしまった」と説明した。千葉県医師会の幹部は取材に「現在はコロナに感染した妊産婦は事実上、救急搬送先はない。分娩(ぶんべん)専門クリニックで感染者を診察することも、ほかの妊産婦へのリスクを考えると現実問題として不可能だ」と明かした。
県の担当者は「広域調整をしても、全県で病床が不足してすぐに入院先が見つからなかった」と話す。
今回の問題を受けて千葉大病院(千葉市)は、コロナに感染した妊産婦を受け入れる専用病床を設置する方針を決めた。周産母子センターにある母体胎児集中治療室(6床)の一部を充てる。医療関係者によると、県内の周産期医療ネットワークでは、感染した妊婦の健康観察はかかりつけ医が責任をもってすること、緊急時には円滑に搬送して治療が始められるようにすることなどを確認したという。
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