京都っ子の夏休み飾る地蔵盆 コロナ禍に揺れる町内会
京都の子どもたちにとって、これなしに夏休みは終われないとも言われるのが「地蔵盆」。お地蔵さまの前に集まって一緒に遊び、子どもの成長や町内の安全を願う、毎年8月の伝統行事だ。新型コロナウイルスの影響で開催を見合わせる地域が少なくないなか、この夏の風物詩を守り伝えようとする取り組みがある。
京都市の小学5年生、若村涼佳さん(10)は今月11日、うちわ作りやデジタルゲームをひとしきり楽しみ、台の上に置かれたお地蔵さんに手を合わせた。
「工作が好き。家で過ごす時間が多い夏休みなので、外で楽しめた」
遊んでいた場所は大丸京都店(京都市下京区)の1階。この日始まったイベント「だいまるきょうとっこがくえん地蔵盆」の会場だ。参加人数を絞って、17日まで様々な遊びを用意した。
お地蔵さんは、地蔵菩薩(ぼさつ)を本尊とする壬生寺(中京区)からレンタル。ヒマワリやかき氷、スイカなど夏らしい絵が描かれた行灯(あんどん)約30個も飾られている。
若村さんの母、真紀さんは「マンション暮らしで地蔵盆はないので、京都生まれの子どもに経験させたくて、来ました」と話した。
「地蔵盆」は、地蔵菩薩の縁日である8月24日前後に、町内の安全や子どもの健全育成を願って開かれる伝統行事。起源は分からないが江戸時代には行われていた記録が残り、京都をはじめ近畿地方に伝わる。
京都市出身の芥川賞作家、綿矢りささんも短編「トイレの懺悔(ざんげ)室」で、地蔵盆について主人公のセリフで触れている。
「八月の最後の週末に地蔵盆がなければ、ほかの地方の小学生たちは、夏休みがもうすぐ終わってしまう憂(う)さをいったいどうやって晴らすんだろう」
町内会や町内の子ども会が運営主体となり、地元のお地蔵さんをほこらから出して新しい前掛けを着せるのが習わし。読経に合わせて子どもたちが巨大な数珠を回す「数珠まわし」や、スイカ割り、ゲーム大会、福引など、お地蔵さんに見守られるようにして楽しむひとときは、夏休みの最後を飾る思い出となる。
「遊びながら地域や世代をつなぐ伝統行事を学び、家族で思い出を作ってもらえれば」
大丸京都店営業推進部の阿部枝里さん(36)は、同店初の地蔵盆イベントを開いた狙いをそう話す。阿部さんが子どものころ、地域の人たちが集会所に集まって地蔵盆を開いてくれていた。だが、コロナ禍もあり、伝統は揺らいでいる。それでも夏の思い出を作ってもらおうと企画したのだという。
京都市が2013年に町内会を対象に実施した調査では、地蔵盆を実施していたのは約8割。子どもが減り、高齢化による担い手不足もあって、行事をやめたり、簡略化したりする町内会が出ているという。そのため市は伝統を守ろうと14年、地蔵盆を市独自の「京都をつなぐ無形文化遺産」に選んだ。
だが、昨年からの新型コロナ…
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