川井梨紗子「周り全部が敵」からの連覇 伊調、吉田からの言葉を胸に
金子智彦
試合をする楽しみは、5年前より明らかに減った。
金メダルが当然――。「お家芸」の重圧がかかる東京オリンピック(五輪)レスリング女子で、57キロ級の川井梨紗子が2大会連続で頂点に立った。「連覇は誰もが目指せるものじゃない。年数と重みが違う」とかみ締めた。
女子は、正式種目となった2004年アテネ五輪以降、前回大会までに11個の金メダルを獲得してきた。しかし、そのうち7個が3連覇の吉田沙保里、4連覇の伊調馨によるものだ。そして、かつてほど日本の優位はなくなった。
リオデジャネイロ五輪63キロ級で優勝したとき、川井梨は最年少で、「プレッシャーがなかった」と振り返る。その後、世代交代が進む中で、自然と中心的な役割を担わされるようになった。
18年、母校であり、練習拠点だった愛知・至学館大の指導者による伊調へのパワハラ問題が起きた。休養から復帰した伊調との57キロ級の東京五輪代表争いは、双方の指導者間の係争に絡めて「代理戦争」とみられた。
戦いの第1ラウンド、18年…