台風、ひとり悩んだ判断 死亡の市局長に公務災害認定

有料記事

下地毅
[PR]

 和歌山県田辺市を襲った2018年8月の台風20号で、市役所の防災体制の指揮をとった危機管理局長(当時57)が直後に亡くなり、地方公務員災害補償基金が「公務上の災害」と認定していたことがわかった。

出すか出さぬか 「はざまに」苦しんだ

 20年6月16日付で認定した基金の資料などによると、危機管理局長は18年8月23日から24日にかけて強いストレスに襲われていたことがうかがえる。

 田辺市の資料によると、このときの気象情報は23日朝の暴風警報をかわきりに、大雨警報、洪水警報土砂災害警戒情報とめまぐるしく変わり、夜までにこれらの発表は計20回にのぼった。避難情報も避難準備・高齢者等避難開始から始まり、夜になって避難勧告へ、さらには一部地域への避難指示(緊急)へと警戒の度をあげていった。

 台風20号が最接近した23日夜、局長は深く悩んでいた。

 避難勧告を市の全域に出した場合、見通しの悪い夜間に避難行動をとった市民が、かえって台風による強烈な風雨の被害に遭うのではないか。

 避難勧告を出さなかったら、すでに市全域に土砂災害警戒情報が発表されているなかで、自宅にとどまった市民が土砂災害に遭わないか。

 この「はざま」に苦しんだすえに局長は23日午後9時58分、市全域への避難勧告を発令し、災害対策準備室の設置を決めた。

 その後、暴風雨のピークがすぎたため警報は順次解除され、市の防災体制も縮小していった。

 ところが24日朝に大雨警報が再び出たため、夜通しの勤務だった局長は休む間もなく対応に追われた。

 帰宅は24日午後6時ごろになった。翌朝にけいれんしている姿を家族が見つけて、26日午前5時56分に脳出血のひとつ「橋(きょう)出血」で亡くなった。

 基金は「実質的に災害対応の指揮を執り、最終的な判断をせざるを得ず、また、ほとんど休息する間もなく業務に従事したものであることから、強度の精神的又(また)は肉体的負荷を受けたものと認められ、異常な出来事・突発的事態に遭遇した」と判断し、公務災害と認定した。

自宅待機の副市長 なぜ?

 「風呂入りたい」「しんどい…

この記事は有料記事です。残り797文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【本日23:59まで!】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら