元ヤングケアラー「勇気を出して話を」 埼玉で出張授業

川野由起
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 病気や障害のある家族や幼いきょうだいの世話をする18歳未満の「ヤングケアラー」に対する理解を深めてもらおうと、埼玉県が行う出張授業が19日、草加市の県立草加西高校であった。元ヤングケアラーが体験談を話し、参加した生徒約700人が耳を傾けた。

 出張授業は、県が策定した「県ケアラー支援計画」(2021年度から3年間)に基づく取り組みの一つ。同校では、小学生の頃から難病の妹のケアをしていた沖侑香里さん(31)が、ヤングケアラーだったときの思いを語った。

 それによると、当時、妹の食事の介助やおむつの交換、たんの吸引といった世話を母親と分担。学校では障害のある家族がいることに対する周りの目が気になったり、進路について悩んだときに誰に相談したらいいのかわからなかったりしたという。

 沖さんは「助けてくれる人は絶対にいる。『この人なら頼りたい』と思う人に勇気を出して話してほしい」と話した。ヤングケアラーを支える側の生徒や教職員らには「事情をわかった上で、そっと見守ることも大切。配慮をしつつ、目の前の人に向き合ってほしい」と呼びかけた。

 話を聞いた吉村昌華さん(3年)は「ケアラーは自分とは関係ないと思っていたが、寄り添ってあげることができるのではないかと感じた」と振り返った。

 出張授業は「ヤングケアラーサポートクラス」と名付け、今後、南稜高校、誠和福祉高校、杉戸高校、常盤高校の県立4校と、杉戸町立杉戸中学校、上尾市立大谷中学校で実施する予定。11月には保護者向けの出張授業を計画している。

 県教育委員会の高田直芳教育長は「自分の周りにもヤングケアラーの友だちがいることを知り、困っていることは相談したり、力になってあげたりしてほしい」と話している。

 支援計画ではほかに、ケアラーが気軽に相談できる窓口を23年度末までに県内全市町村に設けるといった具体的な目標を盛り込んでおり、県は計画に沿ってケアラー支援の体制を強化することにしている。

 ヤングケアラーをめぐっては、県が昨年、県内の高校2年生約5万5千人を対象に実態調査を行ったところ、約25人に1人がヤングケアラーという結果だった。

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この記事を書いた人
川野由起
くらし科学医療部
専門・関心分野
こどもの虐待、社会的養育、アディクション