出所2日でトラック暴走 2人殺害した被告の「身勝手」
清掃ボランティア中の男女2人が、暴走するトラックにはねられて亡くなった。殺人罪で起訴されたのは、刑務所を2日前に出たばかりの男だった。見知らぬ人を故意にはね飛ばそうと考えた被告の動機は何だったのか。遺族は法廷で、身勝手な「被告の夢」をかなえないでと極刑を求めた。
6月7日、福島地裁郡山支部で開かれた裁判員裁判の初公判。被告の男(51)は白い長袖のワイシャツに紺色のジーンズ姿、白髪まじりの短髪でうつむきながら証言台に立った。裁判長から起訴内容について問われると小声でつぶやき、裁判長が聞き直すと「殺そうとはしていません」と小さく答えた。
被告は2020年5月31日、福島県三春町の国道で地域の清掃活動に参加していた、いずれも会社員の男性(当時55)と女性(当時52)をトラックで故意にはねて殺害したなどとして、殺人などの罪で起訴された。
検察の冒頭陳述や公判でのやり取りから、事件に至るまでの経緯をたどる。
福島県伊達市出身の被告は、高校の農業科を卒業後、地元の鉄鋼会社に就職。だが、人間関係のトラブルから4カ月足らずでやめた。次の建築会社では約20年間働いたが、またもトラブルが原因となり39歳で退職し、その後は塗装工、とび職、除染作業員など職を転々とした。
出所後の雇用先、白紙とされた被告は……
その間、結婚をして3人の娘に恵まれたが、離婚し、娘たちは妻が引き取った。
弁護人「どうして職を転々とすることになったのですか」
被告「人間関係がうまくいかなかったのかなと思います」
弁護人「どういう理由でうまくいかなかったのだと思いますか」
被告「自分の前科関係だと思います」
被告はパチンコ店での暴行や飲食店での恐喝未遂、つきまとっていた女性への監禁などの罪で5回の有罪判決を受け、計3回、刑務所で服役していた。
3回目の服役中、被告は知り合いの内装工事会社の社長に手紙を送り、出所後に雇ってもらう約束をした。しかし、仮釈放を間近に控えた20年4月上旬、刑務所職員に反抗したとして、仮釈放は取り消しになった。
雇用を約束していた社長は被告の住まいとしてすでにアパートの部屋を契約していたが、被告の態度に失望し、白紙にすると手紙で伝えた。
弁護人「雇用を白紙にする手紙を見たときは、どう思いましたか」
被告「落ち込んだと、思いま…
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きょうも傍聴席にいます。
事件は世相を映します。傍聴席から「今」を見つめます。2017年9月~20年11月に配信された30本を収録した単行本「ひとりぼっちが怖かった」(幻冬舎)が刊行されました。[もっと見る]