共生社会どう考える? やまゆり園近くの津久井高で討議

岩堀滋
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 障害者ら45人が殺傷された相模原市緑区の「神奈川県津久井やまゆり園」の事件から7月で5年を迎えるのを前に、園に近い県立津久井高校(熊坂和也校長)で、障害者と健常者がともに支え合う「共生社会」を考える催しがあった。これから何をどう考え、どう行動すればいいか。基調講演をもとに、生徒が考えを出し合った。

 公益社団法人津久井青年会議所が主催し、同校福祉科の生徒約90人が教室で参加。映画「こんな夜更けにバナナかよ」の原作者で、津久井やまゆり園の事件も取材した渡辺一史さんがプロジェクター越しに基調講演を行い、問題提起を受けて生徒らが議論した。

 渡辺さんは筋ジストロフィー患者への取材経験などを交えて、現代社会は個人の尊重という概念と、障害者は「社会のお荷物」で財政難の元凶だという概念との間で両極端に揺れていると指摘。生産性を重視する考え方が幅を利かせつつある一方で、人間は誰もが老いるし、病気や障害でうまく体が動かなくなる可能性があると話した。

 そのうえで、障害者は生きる価値があるのか▽税金で支える必要があるのか▽弱肉強食の自然界と異なり人間界ではなぜ社会的弱者を救うのか(なぜ優れた遺伝子だけを尊重する考えが出るのか)、の3問を生徒に投げかけた。

 同校福祉科は県立高校で唯一、介護福祉士国家試験の受験資格が得られるカリキュラムを備える。生徒からは、「障害の有無に関わらず、だれもが等しく生きる価値がある」「税金はだれもが等しく使われるべきだ」などの意見が出た。

 渡辺さんは「実はこの問いかけには、自分が同じ立場になるかもしれないという視点が欠けている」とし、障害者や高齢者を支えることで自分も成長できると考えるべきで、それが共生社会であり、人が生きる本質だと結んだ。

 同校は事件前、津久井やまゆり園で実習を行っていた。今回の生徒は事件当時中学1年生。福祉科の林睦総括教諭は「やまゆり園は8月に津久井へ戻る。事件を風化させないことは大切。共生社会を考えるよい機会になったのではないか」と生徒に訴えかけた。

 3年生の内海大地さん(17)は「事件や共生社会のことを多くの人が考えるようになれば、事件の抑止力にもつながるはず」。平本遼太さん(17)は「障害者と健常者の区分けを超えて、自分たちに何が出来るのかを考えるきっかけになった」などと語った。

 基調講演と討議は7月15日午後7時から、オンライン会議システム(Zoom)でも視聴出来る。津久井青年会議所のウェブサイト(https://tsukui-jc.com/別ウインドウで開きます)から申し込む。

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この記事を書いた人
岩堀滋
さいたま総局|さいたま市政担当
専門・関心分野
障害者福祉、医療、地方自治