平仮名ばかりの「やさしい日本語」 外国人のためだけ?

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聞き手・真鍋弘樹
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 市区町村のウェブページや公共施設の案内などで、平仮名ばかりの文章を見かけることがある。「やさしい日本語」というらしい。目にすると、どうも奇妙な心地がする。幼児向けの本を読んでいるような……。日本語教育を専門にしている、言語学者の庵(いおり)功雄さんに聞いた。「やさしい」のは、誰のため、何のためですか。

定住外国人と意志疎通するため、語彙や漢字を減らした共通言語 庵功雄さん(言語学者)

 ――そもそも「やさしい日本語」とは何ですか。街などで平仮名ばかりの表記を見ることが増えましたが、定義はあるのですか。

 「日本語の語彙(ごい)を絞って漢字を減らし、文のパターンを30種類ほどにします。例えば、条件を示す語として『(する)と』『(すれ)ば』『(し)たら』『(する)なら』がありますが、『やさしい日本語』では、『たら』しか使いません。ほかにも、『と思います』は使わず、『たぶん』だけにしますし、ほぼ同じ意味を表す文法形式が複数ある場合は、一つだけを使います。それでも、かなりの内容が伝えられるのです」

 「26年前の阪神大震災では、多くの在日外国人が避難先などについての重要情報を得られず、二次被災しました。この経験を元に、災害時に大切な情報を伝えるために考案されたものです。最近では、日本人と外国人が意思疎通をするための共通言語として、平時にも使われるようになりました」

 ――日本語を簡単にするのではなく、英語や中国語といった多言語で表示したり、話したりするのでは駄目なのでしょうか。

 「国内に住む外国人を対象にした国立国語研究所の調査では、英語よりも日本語の方が『わかる』と答えた人が多いという結果が出ています。旅行者には英語が適していますが、長期定住者は日本語の方が理解しやすい。英語は日本人の側も得意とは言えません」

 「それに、多言語といっても定住外国人の多くが話す主な言語だけでも20近くあり、すべてに応じるのは現実的ではありません。自動翻訳にはまだ問題が多く、正確に伝えるには母語話者によるチェックも必要で、現状では限界があります」

 ――台風への警戒を呼びかけるため、「がいこくじんの みなさんへ」と平仮名だけを使ったNHKのツイートが、「ばかにしている」などと炎上したことがあります。「日本語が乱れる」と違和感を抱く人もいるようです。

庵さんは、中国語や英語は「寛容な言語」だとし、「そんな国際語に日本語も近づくべきだ」と言います。庵さんに続き、中学1年で来日した多言語電話通訳企業勤務のカブレホス・セサルさんが経験を語ります。

 「『やさしい日本語』は、外…

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