ワクチン接種で留学再開できる? 慶応や上智、早大は…

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編集委員・宮坂麻子
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 新型コロナウイルスワクチンの職域接種の一環で、21日から一部の大学でも接種が始まる。この接種は、コロナ禍で海外留学の夢をあきらめかけていた学生たちにも、朗報をもたらしつつある。ただ、接種の準備が整う大学とそうでない大学で、明暗が分かれる懸念も出てきた。

 萩生田光一文部科学相は8日の記者会見で、学生にワクチン接種を義務づける海外大などが増えていることに触れ、「学位を取得する目的で海外へ行く人から接種を始め、段階的に対象を広げたい」とした。

 国は留学生に限らず、外務省の感染症危険情報レベルが2(不要不急の渡航中止)以上の国・地域への渡航の中止を求めている。留学先となるほぼすべての国・地域が「2以上」に該当しており、例年、多くの大学で実施される交換留学の大半は昨年度から事実上ストップしていた。

 一方、交換留学以外の、私費や民間奨学金での個人留学、海外大進学などでは、コロナ禍のもとでも自己責任で渡航し、海外で学ぶ人も少なくない。

就職活動考え、1年間休学して待った末……

 慶応大総合政策学部3年の男子学生(21)は、交換留学の再開を待つ学生の一人だ。元々は昨秋から交換留学でスイスの大学に行く予定だったが、危険情報レベルが1まで下がらず、交換留学は中止になった。

 悩んだ末、同じ大学に2021年秋から留学することを目指し、1年間の休学に踏み切った。描いたのは、「3年生のまま21年秋から留学し、22年夏に帰国して再び3年生として学び、就職活動に入る」というプラン。3年生で帰国し、余裕をもって就職活動の準備をしようと考えた。

 同じ大学への交換留学の選抜に再び挑戦し、合格。今秋からの留学が実現するかと思われたが、今年5月末、またも「中止」の連絡が入り、落胆した。

 友人たちは就職活動を始めているが、自分は留学を考えていたため、就職活動は進んでいない。危険情報レベルが2以上でも留学を認めてもらうよう、仲間と大学にかけあってきた。

 一転して光が見えたのは今月8日のことだ。その前日、慶応大は学生らへのワクチン接種を21日から開始すると発表。8日になって、渡航前のワクチン接種、コロナ対応の保険加入など10項目の条件を満たせば、交換留学を認めると学生に通知した。「急なことで準備もできていないけれど、うれしいです」

 同じく今秋から英国への交換留学を予定する同大法学部3年の男子学生(20)も、5月から他大学の学生と連携して、「交換留学にも規制緩和を」などと各大学へ働きかけてきた。

うれしい、でも申し訳ない……

 大学から届いた、留学を認め…

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この記事を書いた人
宮坂麻子
編集委員|教育・こども担当
専門・関心分野
教育・こども
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    岡本峰子
    (朝日新聞パブリックエディター)
    2021年6月12日0時21分 投稿
    【提案】

    自らの経験を振り返っても、大学時代の海外体験は人生の宝物。もちろん学位取得目的の留学は大切だけれど、それ以外の機会も担保してあげたい。自治体によっては20~30代の若い世代に優先して接種するところもある。大学が接種の機会を用意できないのであ

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    宮坂麻子
    (朝日新聞編集委員=教育、子ども)
    2021年6月12日15時54分 投稿
    【提案】

    コロナ禍になって、留学を希望する高校生、大学生から相談を受けることが多くなった。「友達は留学したのに、なぜ自分はいけないのか……」「海外側は受け入れているのにいつになったら行けるのか」「五輪はやるのに」という。特に大学生は切実だ。2、3年生

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