「情報」新設、「地歴・公民」は再編 来年の共通テストの変更点は?
来年1月18、19日にある大学入学共通テストの出願受け付けが25日始まった。5回目の今回は、2022年度の高校1年生から導入された新学習指導要領に初めて対応。新教科の追加など、かつてない大きな内容変更となる。
大きな変更の一つは、「情報Ⅰ」の新設。国立大の一般選抜は、従来の「5教科7科目」から「6教科8科目」が基本になる。
情報は、プログラミングやデータ活用なども盛り込んだ新課程の「情報Ⅰ」と、旧課程の「旧情報」の2種類がある。高3生は全員「情報Ⅰ」だが、既卒生は当日問題を見て、どちらか選択して受験することも可能。ただ、大手予備校の模試結果などから、「情報Ⅰ」を選ぶ既卒生も少なくないとみられる。初めてで、受験必須にしている国立大が多いため、英語、国語、数学に次ぐ受験者数になるとみられている。
ただし、「情報Ⅰ」「旧情報」は他科目と違い、受験者数が1万人未満でも得点調整が行われるため、注意が必要だ。
「地理歴史・公民」の科目も大きく変わる。日本と世界の近現代史を横断的に学ぶ必修科目「歴史総合」などが新設された後では、初の共通テストとなる。「地歴・公民」の科目再編は、大学入試センター試験時代だった1997年以来だ。
具体的には、これまでの「世界史、日本史、地理の各A・B科目」などを再編。「地理総合・地理探究」「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」「公共・倫理」「公共・政治経済」「地理総合・歴史総合・公共(うち2分野を選んで解答)」の6科目から最大二つを選ぶ仕組みになった。受験する科目数は出願時に登録し、当日は変えられない。
2科目を受ける場合の選択方法については、「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」の組み合わせを除き、「同一の名称が入る2科目は選べない」という決まりもある。特に「地理総合・歴史総合・公共」を選ぶ場合、選択方法が複雑になる。例えば、「歴史総合と公共」の2分野を選んだ受験生は「地理総合・地理探究」しか選べない。「地理総合と歴史総合」を選んだら、選択肢は「公共・倫理」「公共・政経」のどちらかのみだ。
受験生の科目選択はどういう傾向になりそうなのか。各予備校によると、文系は「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」「地理総合・地理探究」のいずれかを選択する生徒が多く、2科目目は「公共・政経」が最多という。理系は圧倒的に「地理総合・地理探究」だ。
一方、「地理総合・歴史総合・公共」の選択者はかなり少なそうだ。
代々木ゼミナールの木戸葵・教育情報室長は「文系も理系も科目選択の傾向はこれまでとほぼ同じ。2科目を選択する場合は、その組み合わせで志望校を受けられるのか、募集要項をよく読むようにしてほしい」と話す。
国語は大問が4問から5問に増え、試験時間も10分増の90分となる。5問の内訳は、3問が近代以降の文章(論理的な文章・文学的な文章・実用的な文章)、2問が古典(古文・漢文)。従来は「評論文、小説、古文、漢文」だったが1問増えた分は、これまで出題のない「実用的な文章」が出るのではと予測される。具体的には「報道や広報の文章、会議録や裁判の記録、説明書や契約書といった実務的な文章」などだ。
数学は、従来の「数学Ⅱ・数学B」が「数学Ⅱ・数学B・数学C」となり、試験時間が10分増の70分になる。受験生は、数学Bの2項目(数列、統計的な推測)と数学Cの2項目(ベクトル、平面上の曲線と複素数平面)から3項目を選ぶ形となる。
駿台予備学校の元進学情報事業部長で、大学入試アナリストの石原賢一さんは、変更点の多い今回のテストを「初めてずくめ」と表現する。また、新指導要領で「思考・判断・表現」が重視されている点を踏まえ、論理的思考力をみる出題が今後も増えると予測。「例えば、英語も、文章を読む速さもさることながら、図表などの資料からポイントを読み取る思考力が課題になる。日ごろから対応した学習をしていないと、問題文は読めても、設問と資料を結びつけて考える時間が足りず、解答が難しくなる」と指摘する。
■次回からはオンライン出願に
今回の出願書類の受け付けは10月7日(消印有効)までで、国公私立大学など840校以上が利用する見込み。26年実施のテストからは、出願手続きが原則オンライン化される。手書きで記入した志願票を、在校生分は各校がまとめてセンターに送っていたが、志願者がオンラインで受験科目などを登録し、受験票も各自、紙に印刷して持参する方式となる。