宮坂麻子

編集委員 | 教育・こども担当
専門・関心分野教育・こども

現在の仕事・担当

教育分野を担当する編集委員

バックグラウンド

1992年入社。愛知県の中学生のいじめ自殺事件を取材し、以降、30年以上ずっと文部科学省記者クラブ、東京本社教育班などで、教育とこどもの問題を報じてきました。年間50以上の授業を取材し、小中学校の授業をルポする「花まる先生 公開授業」を16年間連載。発達障がいなどの子どもたちの前にたちはだかる日本の教育の壁などを描いた連載「凸凹の輝く教育」も書籍化。不登校など学校教育の課題や、すすまないインクルーシブ教育などにも関心が高い。近年は、学校・授業改革、入試改革のほか、教育×テクノロジーの「教育DX」も連載などで追い続けています。

仕事で大切にしていること

「みんな違ってみんないい」
どんな子も、自分らしく笑顔で生きられる教育・社会をめざしています。

著作

  • 『学びに凸凹のある子が輝くデジタル時代の教育支援ガイド-子ども・保護者・教師からの100の提言』(Gakken 2021年)=編著
  • 『今すぐ受けたい授業』(朝日新聞出版 2013年)=編著
  • 『感動する授業』(朝日新聞出版 2012年)=編著
  • 『いちばん受けたい授業』(朝日新聞出版 2009年)=編著
  • 『坪田耕三の切ってはって算数力』(教育出版 2016年)=編著

タイムライン

記事を書きました

次期学習指導要領の改訂 現場にどう伝えるか、教科書も議論を

 次の学習指導要領改訂に向けた本格的な議論が、今年中にも中央教育審議会で始まる。過去の改訂や答申にも関わり、文部科学省「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の座長も務めた、天笠茂・千葉大名誉教授に考えを聞いた。  ――長く学習指導要領の改訂などに関わってこられました。次の改訂で大切なことは。  いまの学習指導要領は、中身的にはいいものだと思っています。ただ、コロナ禍やGIGAスクール構想などがあって、学校現場では習熟しきれていません。  昭和、平成、令和を通して、学習指導要領を議論して伝える側と、受け取る学校現場との間に距離や溝があると感じます。指導要領のめざすことがなかなか現場に届かない、定着しない。次の改訂では、学校現場にどう伝えるか真剣に考えることが重要であり、また審議の場に現場の実践をどうフィードバックさせるかも課題です。  ――学習指導要領や解説を読まない先生もいらっしゃるという声もあります。  これについては、学習指導要領の内容を学校現場に伝える仕組みを理解する必要があります。古い話になりますが、「ゆとりの時間」が生まれた1977年の改訂にあたり、小学校では学習指導要領、現在の「解説」にあたる「指導書」、そして事例集や指導資料の「教育課程一般指導資料」が公刊されました。この学習指導要領から事例集までの枠組みは現在まで大きく変わっていません。これをどう編成して活用をはかり、学校現場に伝えていくか、改訂のたびに問われてきました。  ちなみに、当時の指導資料は3冊あり、Ⅰは合科的指導などの事例集、Ⅱは「地域の実態に即した教育課程」、Ⅲは「個人差に応じる学習指導事例集」として、単元内自由進度学習や自由課題学習などの実践例が掲載されており、実践事例集に力を入れたことがわかります。その後の経過で、教育課程の編成の基準を示すことと、趣旨を説明することにおいて、学習指導要領と「解説」の関係に関心が集まり、今日においては「解説」の分量の多さを指摘する声が聞かれます。  一方、実際のところ先生方は、教科書会社が編集し検定を通過した教科書や準拠した教師用指導書を見て授業をなさる。さらに、教材会社などが作った副読本をはじめワークブックなどを利用し、子どもたちの評価に用いることもあります。日本の学校教育は、学校の先生方をはじめ、文部科学省や教育行政関係者とともに、こうした教科書会社、教材会社などの一連の人々も関わることによって成り立っている。これら様々な関係者をつなぐものとして学習指導要領があるわけで、その趣旨や基準の共有が大切になってきます。 ■教科書の在り方、デジタル教材の在り方もテーマに  ――教科書が分厚くなって全部教えきれないという指摘もあります。  学習指導要領は教科書によって体現される側面があります。発展的な指導を重視する方向性が打ち出されて以来、教科書の分量の増加が見られるようになりました。その改善が必要であると同時に、「すべてを教える」という教科書についての考えや指導の見直しも問われています。  次の改訂では、教科書の在り方も大きなテーマになるのではないでしょうか。いまの教科書や教師用指導書は、経験の浅い先生方に配慮して丁寧に作られています。ただ、その丁寧さがかえって先生たちの指導力や成長を阻むことになっていないか。考え直さなくてはならないところもあると思われます。  他方、デジタル教科書をどのように考え、扱っていくかも課題です。例えば、付属するデジタル教材や資料の扱いです。学習者に多くを委ねることも考えられます。自分でどんどん資料や動画を見て突き詰めていく。いろいろな教科、さらには社会に向けて関心を広げていく学びのための材料が大切になってきます。あわせて、学びの伴走者としての教師の指導の在り方が問われることになります。学びの材料をめぐり、授業者の裁量や判断を大切にするとともに、「どれを使えば? どこまで?」といったことについて、一定の合意形成があるとよいと思われ、この点の検討が求められます。  ――教員養成は?  学習指導要領がめざすところとして、問いを立てて調べられるか、探れるか、などの資質・能力を子どもたちに育てようとしています。教師養成も、そうした趣旨や方向性に応じて、若き教師を育てるためのカリキュラムや指導法の見直しが求められます。まずは、学習指導要領改訂と教員養成の見直しの検討時期を重ねるなど、相互の往還を一層図る必要があります。  ――標準授業時数の削減は必要ないですか。  標準授業時数を考える視点として、改めて学校週5日制を前提とした教育課程の在り方を検討すべきです。学校を取り巻く環境は、すでに週5日制社会のもとにありますが、学校の仕組みや運営、さらに教育課程となると、週6日制を積み残して今に至っているところがあります。社会の理解をもとに、週5日制のもとでの教育課程について検討すべきです。  世界の動きは激しいものがあります。時代の要請に従って、新しいものを採り入れ、役割を終えたものは削ることが考えられます。しかし、総論ではそうなのですが、各論や具体になると、「どれも大切」ということで、話は先に進まないということがあります。  教科などの横断とか現代的課題の扱いをはじめ、教科などの構成を柔軟に扱うカリキュラムの在り方など、カリキュラム全体を見直す研究開発が急がれます。  「カリキュラム・オーバーロード」という言葉があります。教育課程をめぐって、この言葉がよく使われるようになりました。ただ、それは先生方を取り巻く働く環境整備の問題なのか、子どもたちへの教育の観点で、教育内容の観点で「過積載」なのか、そこは丁寧に分けた議論が必要でしょう。  学校の組織力を高めることも必要です。学校は基準を踏まえて教育課程を編成するとされ、裁量が認められています。これらを踏まえ、特色ある教育課程のもとに教育活動が進められるよう、学校を支えていく方策や条件整備の在り方についての検討が、次の改訂に向けて大きな課題となります。  10年ごとの改訂の在り方も問われています。現行のものを継承しつつ、その上でそれぞれの立場で新しい視点、アイデアを出し合って、次の学習指導要領を生み出していく。日本の教育の先行きについて、今回の改訂が大きな鍵を握ることを押さえておきたいです。 ■略歴  あまがさ・しげる 1950年、東京都生まれ。専門は学校経営学、カリキュラム・マネジメント。公立小教諭、筑波大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学を経て、97年から千葉大教授。文部科学省中央教育審議会副会長など歴任。過去の学習指導要領改訂や令和の答申に関わる。今回の文科省「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」座長。「新教育課程を創る学校経営戦略 カリキュラム・マネジメントの理論と実践」(ぎょうせい)ほか著書多数。

次期学習指導要領の改訂 現場にどう伝えるか、教科書も議論を

記事を書きました

「情報」新設、「地歴・公民」は再編 来年の共通テストの変更点は?

 来年1月18、19日にある大学入学共通テストの出願受け付けが25日始まった。5回目の今回は、2022年度の高校1年生から導入された新学習指導要領に初めて対応。新教科の追加など、かつてない大きな内容変更となる。  大きな変更の一つは、「情報Ⅰ」の新設。国立大の一般選抜は、従来の「5教科7科目」から「6教科8科目」が基本になる。  情報は、プログラミングやデータ活用なども盛り込んだ新課程の「情報Ⅰ」と、旧課程の「旧情報」の2種類がある。高3生は全員「情報Ⅰ」だが、既卒生は当日問題を見て、どちらか選択して受験することも可能。ただ、大手予備校の模試結果などから、「情報Ⅰ」を選ぶ既卒生も少なくないとみられる。初めてで、受験必須にしている国立大が多いため、英語、国語、数学に次ぐ受験者数になるとみられている。  ただし、「情報Ⅰ」「旧情報」は他科目と違い、受験者数が1万人未満でも得点調整が行われるため、注意が必要だ。  「地理歴史・公民」の科目も大きく変わる。日本と世界の近現代史を横断的に学ぶ必修科目「歴史総合」などが新設された後では、初の共通テストとなる。「地歴・公民」の科目再編は、大学入試センター試験時代だった1997年以来だ。  具体的には、これまでの「世界史、日本史、地理の各A・B科目」などを再編。「地理総合・地理探究」「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」「公共・倫理」「公共・政治経済」「地理総合・歴史総合・公共(うち2分野を選んで解答)」の6科目から最大二つを選ぶ仕組みになった。受験する科目数は出願時に登録し、当日は変えられない。  2科目を受ける場合の選択方法については、「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」の組み合わせを除き、「同一の名称が入る2科目は選べない」という決まりもある。特に「地理総合・歴史総合・公共」を選ぶ場合、選択方法が複雑になる。例えば、「歴史総合と公共」の2分野を選んだ受験生は「地理総合・地理探究」しか選べない。「地理総合と歴史総合」を選んだら、選択肢は「公共・倫理」「公共・政経」のどちらかのみだ。  受験生の科目選択はどういう傾向になりそうなのか。各予備校によると、文系は「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」「地理総合・地理探究」のいずれかを選択する生徒が多く、2科目目は「公共・政経」が最多という。理系は圧倒的に「地理総合・地理探究」だ。  一方、「地理総合・歴史総合・公共」の選択者はかなり少なそうだ。  代々木ゼミナールの木戸葵・教育情報室長は「文系も理系も科目選択の傾向はこれまでとほぼ同じ。2科目を選択する場合は、その組み合わせで志望校を受けられるのか、募集要項をよく読むようにしてほしい」と話す。  国語は大問が4問から5問に増え、試験時間も10分増の90分となる。5問の内訳は、3問が近代以降の文章(論理的な文章・文学的な文章・実用的な文章)、2問が古典(古文・漢文)。従来は「評論文、小説、古文、漢文」だったが1問増えた分は、これまで出題のない「実用的な文章」が出るのではと予測される。具体的には「報道や広報の文章、会議録や裁判の記録、説明書や契約書といった実務的な文章」などだ。  数学は、従来の「数学Ⅱ・数学B」が「数学Ⅱ・数学B・数学C」となり、試験時間が10分増の70分になる。受験生は、数学Bの2項目(数列、統計的な推測)と数学Cの2項目(ベクトル、平面上の曲線と複素数平面)から3項目を選ぶ形となる。  駿台予備学校の元進学情報事業部長で、大学入試アナリストの石原賢一さんは、変更点の多い今回のテストを「初めてずくめ」と表現する。また、新指導要領で「思考・判断・表現」が重視されている点を踏まえ、論理的思考力をみる出題が今後も増えると予測。「例えば、英語も、文章を読む速さもさることながら、図表などの資料からポイントを読み取る思考力が課題になる。日ごろから対応した学習をしていないと、問題文は読めても、設問と資料を結びつけて考える時間が足りず、解答が難しくなる」と指摘する。 ■次回からはオンライン出願に  今回の出願書類の受け付けは10月7日(消印有効)までで、国公私立大学など840校以上が利用する見込み。26年実施のテストからは、出願手続きが原則オンライン化される。手書きで記入した志願票を、在校生分は各校がまとめてセンターに送っていたが、志願者がオンラインで受験科目などを登録し、受験票も各自、紙に印刷して持参する方式となる。

「情報」新設、「地歴・公民」は再編 来年の共通テストの変更点は?

記事を書きました

「初めてずくめ」の大学入学共通テスト、出願開始 対策と注意点は?

 新しい教育課程になって大きく変わる2025年の大学入学共通テストの出願が始まった。受験生はどんな点に気をつけて、どんな対策をすればいいのか。元駿台予備学校進学情報事業部長で、大学入試アナリストの石原賢一さんに聞いた。  今回は「初めてずくめ」の入試です。  「地理歴史・公民」も再編されて初。2科目受験する場合の科目の組み合わせパターンには制限があるので、よく確認してください。出願時だけでなく、本番でのマークシートや解答欄も注意が必要です。新旧両課程で問題を分けない理科でも、一部の科目で、新旧別の選択問題が設定される可能性もあります。  特に現役生は、数学や情報などに旧課程の問題もあるので、間違えると該当科目を受験しなかったことになり、せっかくの勉強が無になりかねません。 ■「情報Ⅰ」余力があれば受験を 後で使える可能性あり    今回から新設される「情報」は、テスト2日目の最後の科目です。得点換算しない国立大や、受験科目に入れていない公立・私立大の学部学科を現在は志望しているとしても、余力があれば受けておいた方がいいでしょう。  一部の私立大の共通テスト利用型などの入試では、数学などと並んで「情報Ⅰ」を選択できる科目に入れているケースもあります。もしかすると、数学や、範囲が広い物理・化学や地歴などより「情報」の方が得点できるかもしれません。  大学入学後を考えても、これからは、理系に限らずデータ分析などが必要な場面が増えます。勉強したことは無駄にはならないでしょう。受験するなら、大学入試センターが事前に出した「試作問題」などは、必ず解いておきましょう。 ■これまで以上に「時間配分」が重要  どの科目でもこれまで以上に重要になるのが「時間配分」です。  情報は、試験時間が60分間と短い。  国語は、近代以降の文章が1題追加されますが、試験時間は10分しか増えません。時間が足りなくなる可能性が高い。模試などで時間が足りないと感じた人は、近代以降の文章3題を中心にしっかり解くなど、どの問題から解いて得点を狙うか、考えておいた方がいいかもしれません。  数学②(数Ⅱ、数B、数C)も、選択問題が1題増えて、試験時間が10分延びます。国語同様に、時間が足りなくなる可能性があるので、できそうなものから先に取り組み、時間を見ながら進めましょう。  英語も、単語数の増加が毎年のように話題になりますが、文章を読む速さもさることながら、課題になるのは、図表などの資料からポイントを読み取る思考力です。日ごろから対応した学習をしていないと、問題文は読めても、設問を資料と結びつけて考える時間が足りず、答えることが難しくなります。逆に、ポイントを読み取ることが得意な受験生は得点しやすい。  今回は、国語でも探究につながるような考察問題が増えそうですし、地歴の探究科目も新設されています。ますます論理的思考力を求める出題が増えそうです。  国は、学習指導要領などで論理的思考力を身につけるよう求めていますが、大学の個別試験などはまだ知識重視の出題が中心です。従来型の学習方法の高校もあります。早い段階からこうした出題に慣れておくのが理想ですが、不安のある人は、今からでも少しずつ共通テスト型の問題集を解きましょう。 ■個別試験の出願までの日程短い 得点調整も注意を  日程的な問題も注意してください。今年は、共通テストの日程が早めだったので、国立大の個別試験などの出願日まで余裕がありました。しかし、来年は今年より共通テストの実施が5日遅く、自己採点から出願までタイトになります。しかも、情報など新旧課程間での得点調整が予想される科目もある。  また、東京大学の理Ⅰ類、理Ⅱ類、文科類など、第1段階選抜を厳しくする学部学科もあり、他大学の出願者数にも影響が出るでしょう。高校の先生方もいろいろ情報を集め、シミュレーションして、短期間で受験生の相談に対応できるようにしておく必要があります。  今回の次の2026年から共通テストの出願方法が、オンラインに変更されます。これまでは、現役生なら高校が書類をとりまとめてくれましたが、個別対応になります。  今年の出願者約49万人の中には私立大専願などで共通テストの結果は必要ないけれど、データを取るために高校から言われて出願していた高3生もいるため、個別対応になる26年は受験者がさらに減る可能性もあります。  受験生も高校の先生方も、いろんな変化を見ながら対応してください。

「初めてずくめ」の大学入学共通テスト、出願開始 対策と注意点は?
有料会員登録でもっと便利に  記者をフォローしてニュースを身近に