高値続く卵、一部で品薄も 「物価の優等生」異変の理由

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 毎日のように食卓に上る卵の値段が、今年に入って上昇している。5月には月平均の取引価格が過去5年で最高値を更新。高いだけでなく品薄になっている地域もある。「物価の優等生」と言われる鶏卵に、何が起こっているのか。

 「欠品や品薄が発生しております」「お一人様、1パックまで」。5月下旬、神奈川県内にあるスーパー「西友」の卵売り場には、こんな貼り紙が掲げてあった。同社の広報担当者は「地域によっては、卵が品薄の店舗が確かにある」とする。

 食生活に欠かすことのできない卵。最初の異変が生じたのは、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化し始めた、昨年3月ごろだった。

 外出の自粛、ステイホームなどが叫ばれ始めると、「巣ごもり需要」が伸び、それに比例して家庭での卵消費も増加。家計簿をもとに家庭でのお金の使い道を調べる総務省の「家計調査」を見てみると、2人以上世帯の鶏卵の支出金額は、2019年は1カ月あたり764円だったが、20年には845円にアップ。消費量も8%ほど増えた。農林水産省によると、20年3月は鶏卵の卸売価格も前年を大きく上回ったという。

品薄、もうしばらく続く?

 もう一つの異変は、昨年11月から全国で鳥インフルエンザが多発したことだ。

 鳥への感染力と致死率が高い高病原性の鳥インフルエンザは、03年度に79年ぶりに国内で確認され、ほぼ3~4年おきに発生を繰り返している。今季は養鶏場では過去最も早い11月5日に香川県で感染を確認。農水省によると、鳥インフルが発生するシーズンでもある昨年11月~今年3月に、千葉や香川、宮崎県など18県52カ所での発生が確認され、計約987万羽の採卵鶏などが殺処分された。

 発生件数、殺処分数ともに過去最多で、1シーズンの殺処分数としてはこれまで最多だった2010~11年の183万羽をはるかに上回った。

 殺処分はほとんどが採卵鶏で、約900万羽は全国の採卵鶏の約5%にあたる。採卵鶏の飼育数が全国2位で、大消費地の東京やその近郊に近い千葉県では採卵鶏の約4割が殺処分されるなど、産地に大きな打撃を与えた。

 新型コロナと鳥インフルという二つのウイルスが時間差で襲い掛かった結果、今年に入って卵の供給が滞り始め、取引相場にも影響が出始めた。大手鶏卵卸会社も「供給が追いつかず、近年では例にないほど高値になっている」としている。

 「JA全農たまご」(東京都千代田区)によると、卵(Mサイズ)1キロ当たりの取引価格(東京)の相場は今年3月、約1年ぶりに月平均で200円を超えて220円になった。5月には258円まで上がり、過去5年で最高値に。新型コロナの影響で飲食店からの注文が落ち込んだことから「卵不足」にまではならないと見られていたが、見込み違いとなった。

 農水省食肉鶏卵課の担当者は、「冬は鍋やすき焼きといった料理で卵が多く使われるが、春になると例年では取引価格が落ち着く。だが、今年は4、5月も高値が続いた。夏場は需要が減る傾向があるが動向には注視していく」としている。

 鳥インフルエンザの研究をする京都産業大学の高桑弘樹教授は「今シーズンは養鶏場などでの対策が整う前に流行し、感染が拡大した可能性がある。過去にない殺処分数となり、異常な事態。感染が確認された養鶏場が再開するには最低でも半年ほどかかるため、卵の品薄の原因が鳥インフルだとすると、この状況はもうしばらく続くだろう」と話している。山崎啓介

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