積極的勧奨控え8年 HPVワクチン効果、国内外で報告
子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンが使われ始めて10年ほどたち、実際の効果が国内外で報告され始めている。一方、国内では、厚生労働省が接種の積極的な勧奨を控えて6月で8年になる。
HPVの感染率、ワクチン接種でリスク低下
新潟大の榎本隆之教授(産婦人科)らは、新潟県内で子宮頸がん検診を受けた20~21歳の女性について、がんを起こしやすいHPVの16型と18型の感染率を調べている。
ワクチンの接種率が9割ほどの世代では、16型か18型のどちらかに感染している人は2837人中10人(0・4%)なのに対し、接種を積極的にすすめなくなり接種率が4割ほどになった世代では646人中11人(1・7%)。榎本さんは「感染率が、接種が始まる前の世代の数値に戻りつつある」と話す。
榎本さんのチームは19年、約1500人を対象に16型と18型の感染率を調べ、初めての性交前にワクチンをうった人は、うっていない人に比べ、感染リスクが93・9%下がっていることを報告している。
子宮頸がんの95%以上は、HPVの感染が原因とされる。主に性交渉で感染し、5~8割の女性が一度は感染し、約1割の人で感染が持続する。感染からがんになるまでは数年以上かかる。「異形成」という異変が細胞に起き、「上皮内がん」という状態をへて、がんに進行する。
大阪大などのチームは昨年、23道府県の31自治体に協力してもらい、公的な接種記録を使った調査の結果を発表した。調査の対象は、2013~16年度に子宮頸がんの検診を受けた20~24歳の1万5千人。接種を受けた人では、軽度以上の異形成のリスクが58%下がり、中等度以上の異形成のリスクが75%下がっていた。
チームによると、統計的に評価するには人数が足りないが、よりがんに近い「高度異形成」以上のリスクも、約80%下がる可能性があった。周囲の組織に入り込む浸潤がんは、接種していない1万1770人のうち8人で見つかったが、接種した3009人では0人だった。
初めて性交渉する前に接種したかがわからないことや、20代前半できちんと検診に行く一定の層が対象になっているため、有効性の正確な評価には一定の限界はある。
チームの池田さやか医師(婦人科)は「接種が不安な方にも寄り添いつつ、ワクチンのリスクとベネフィット(有益性)を正しくわかりやすく伝えるため、今後も有効性を検証したい」と話す。
がんを減らす効果については昨年、スウェーデンのチームが世界で初めて発表した。06年以降に国のシステムに登録された10~30歳の約167万人について、31歳の誕生日を迎えるか17年末になるまでの経過を追跡した。その結果、接種した人ではがんの発生率が63%低く、17歳になるまでに接種した人に限ると88%低かった。
子宮頸がんは20代後半から増え始めるとされる。実際にがんをどこまで減らせるのか、ワクチンの効果がいつまで続くのか検証するには、接種を受けた人たちの今後の経過をさらに追跡し、解析していく必要がある。
■自治体によるリーフレット配…
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