京都の地下鉄が開業40年 コロナ直撃、運賃上げ議論も

諏訪和仁
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 京都市を南北に貫く大動脈である地下鉄烏丸線が29日、開業から40周年を迎える。新型コロナウイルスの感染の広がりで利用者が大幅に減り、運行する京都市交通局は「危機的な経営状況」だ。立て直しには、運賃の引き上げや減便を検討することになりそうだ。

 烏丸線が開業したのは、1981年5月29日。交通局は記念行事として、事前に募集した「開業40周年記念ロゴマークデザイン」と「未来の地下鉄」の絵画の展示を29日から始める予定だったが、緊急事態宣言が出ているため延期した。この日は、模型やクリアファイルなどのグッズのネット販売だけ。駅や車両基地でのイベントはない。

 コロナ禍は交通局の経営を直撃している。昨年4月から今年2月までの地下鉄の乗客数は前年の同時期に比べて34%減り、バスも32%減だ。運賃収入が減るため、2020年度の赤字は地下鉄61億円、バス56億円の計117億円になる見込み。昨年末に出した「経営レポート」では「かつてない危機的な経営状況」と言い表した。

 そもそも交通局は、地下鉄東西線の建設費がふくらんだせいで、19年度末の有利子負債が3750億円にも上り、47億円の利息を払っている。巨額の借金を背負いながら、利用者を増やす努力を続けてきたが、そこへコロナ禍が襲った。

 収益が悪化したため、地方自治体公営企業を対象にした財政健全化法の「経営健全化団体」になるのはほぼ確実だ。国に再建計画を出さなければならず、交通局は21年度中に独自の中長期計画と一緒に作る。

 再建計画には収益改善策が欠かせない。幹部は「コロナ禍が終息しても乗客数が戻る保証はない。運賃引き上げの議論もしないといけない」と話す。

 運賃以外でも利用者へのしわ寄せがきそうだ。交通局は、乗客が少ない時間帯の運転本数を減らすことも検討する。線路への転落を防ぐ可動式ホーム柵は、烏丸線の全駅につける方針だが、22年度に北大路駅に設けた後は当面延期する。延伸計画も進めようがない。竹田駅から南の京阪本線に向かう4・4キロの計画などについて、担当者は「意義がある路線だが、巨額の建設費が課題」と話す。

 数少ない明るい話は、新型車両だ。2年前に発注した新型車(6両編成)は9編成分の計54両で、税込み110億円。その1編成目が7月にメーカーの近畿車輛から納められ、試運転を始める。来年、営業運転に入る予定だ。(諏訪和仁)

京都市営地下鉄の40年間の主なできごと

1981年 烏丸線が開業(当初区間は北大路~京都)

1997年 東西線が開業(当初区間は醍醐~二条)

2000年 経営健全化プログラムを開始

2003年 新たな経営改善計画を開始

2010年 経営健全化団体(1回目)として再建策を作成

2014年 烏丸線の烏丸御池駅に可動式ホーム柵を設置

2018年 烏丸線で朝夕の通勤通学時間帯で増便

2019年 10年間の経営戦略「経営ビジョン」を決定

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