「五輪の感染対策不十分」「中止が安全か」 米誌に論文

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香取啓介
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 今夏の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックで、新型コロナウイルス感染対策が不十分だとする論文を米国の公衆衛生の専門家らがまとめ、米医学誌に25日発表した。大会組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)などが定めた行動規範(プレーブック)は、「科学的なリスク評価に基づいていない」と、改善を求めた。

 論文を書いたのは、バイデン米大統領の新型コロナ対策の元アドバイザーのオスターホルム・ミネソタ大教授ら4人。

 論文では、大会の1年延期を決めた昨年よりも感染は広がっている一方、日本のワクチン接種率は人口の5%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も低い、と多くの選手・関係者を受け入れるリスクの高さを指摘。「IOCによる五輪開催を進める決定は、最善の科学的根拠によってなされていない」と批判した。

 米プロフットボールNFLや米プロバスケットボールNBAなどの大規模スポーツイベントは、飛沫(ひまつ)や微粒子による感染、無症状感染者の存在、接触確認の方法など知見を重ね、厳格な手順で行われた。

 それでも一部で、集団感染が起き、試合が中止されるなどした。

 4月に公表されたプレーブックでは、宿舎など屋内での感染対策の詳細が不明で、競技中に選手が持ち歩かないスマートフォンのアプリを使って接触確認をすると定めるなど、これまでの教訓が生かされていないとしている。

 論文は、「聖火がともるまで2カ月を切った今、開催中止するのが最も安全な選択肢かもしれない」としつつ、屋内の人数制限や最低1日1回のPCR検査、ウェアラブル端末を使った接触確認の導入などを提案した。

 また、ジカウイルス感染症(ジカ熱)が流行した前回リオデジャネイロ五輪時のように、世界保健機関(WHO)で緊急委員会を開いてリスクを評価するよう求めた。

 組織委などは4月に公表したプレーブックで、選手の検査について、母国で2回検査して陰性証明を取得するほか、空港検査を経て、滞在中は毎日検査を受けるとしている。

 組織委の武藤敏郎事務総長は26日の記者会見で、論文について「内容は確認しているわけではなく、個々の論文へのコメントは控えたい」とした。

 その上で、4月のプレーブックにはコロナ禍の中で行われたスポーツ大会でのコロナ対策の経験も盛り込んだといい、「IOC、WHOとも相談しながら最も適切な対応をとりまとめた」と語った。

 組織委は6月、検査や行動管理を精査した改訂版のプレーブックを公表する予定という。

 論文の著者の一人、米マウントサイナイ医科大のスパロー准教授はツイッターに「まだ対策をとる時間があり、五輪を中止する必要はない」としつつ、IOCについて「金を節約するために、リスクをアスリートと日本国民に押しつけている」と投稿した。

 論文は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(電子版)(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp2108567別ウインドウで開きます)に掲載された。(香取啓介)

東京五輪のプレーブックと「…

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