第3回GPSで迫った「民意の偽造」 リコール事件、責任は

有料記事「100万筆」の果て リコール署名偽造

松島研人 関謙次
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 2月以降、愛知県警の捜査員たちが佐賀に飛んだ。

 「どこの自治体のものを書いたか思い出せますか」

 「豊田という地名だったような……」

 昨年10月に署名を書き写したアルバイトらは、愛知の土地勘がない。別の捜査員が署名簿の束から、豊田市分を抜き出す。「あなたの字ですね」。同じような筆跡が並んだ署名簿を示し、事情を聴いた。

 署名簿に残った見えない指紋。そして手のひらの「掌紋(しょうもん)」。県警はそれらを鑑定し、アルバイトらの供述を裏付けた。名前が記された有権者本人に当たり、署名も代筆依頼もしていないことを確認した。

 650キロ離れた佐賀と愛知で、「書いた側」と「書かれた側」がつながった。

     ◇

 県警が押収した署名簿は数万枚あり、すべて精査するには「数カ月、1年とかかる」(捜査関係者)とみられていた。リコールは請求代表者だけで37人いて、大勢のボランティアも手伝った。出所不明のうわさや、供述の食い違いも目立った。

 そうした中、県警は佐賀のア…

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連載「100万筆」の果て リコール署名偽造(全3回)

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