コロナ禍で苦境のゲストハウス、テレワークに活路 川崎

斎藤博美
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 【神奈川】簡易宿泊所が多かった川崎市川崎区日進町に2018年、旅行者や訪日外国人向けにリニューアルしたゲストハウス「日進月歩」がオープンした。当初は順調だったがコロナ禍で客足は激減。「地獄をみた」という支配人が活路を見いだしたのがテレワークだ。市による応援プランもあって利用者は徐々に増え、町の新しい可能性を作り出している。

 花札、夜の川崎…。「日進月歩」の客室は、アーティストがそれぞれ「日本と川崎」をテーマに自由に描いた内装で彩られている。「まるで美術館で寝落ちするような」感覚を大切に作り上げたという。

 一般のホテルに比べて安いこともあって、バックパッカーや訪日外国人に人気の宿だったが、コロナ禍で様相は一変した。「去年の秋に一時、復活したものの今年の1月2月は宿泊がほぼゼロ。絶望しかありませんでした」。支配人の吉崎弘記さん(47)は言う。

 でも「なんだかあきらめがついちゃって」。遠くの客は来られない。ならば近隣の人に使ってもらう工夫をしよう。こたつやテレビがある共用リビングは、親子数組でくつろぐ場や、簡単な会議ができる場に。3畳ほどの個室は一部の部屋で寝具をはずして、テレワークをしやすくした。宿泊にこだわらず、日帰りで時間貸しをはじめた。3時間3300円、6時間5千円。いずれも近くのカフェのランチ付きだ。

 4月末から川崎市が市内の宿泊施設を対象に始めた「かわさきテレワーク応援プラン」が追い風になった。川崎市民か在勤者に限り、市からの補助がでるため3時間800円、6時間千円で利用できる。ランチ付きはそのままというプランで、利用者は徐々に増えている。

 時々利用するという堀田実希さん(34)は、川崎区内のマンションで夫とともにテレワーク中。「家族そろって終日在宅勤務という日は集中できない。お互いの仕事の電話がうっとうしいし、オンラインでの会議なんかが重なれば回線の取り合いです」と笑う。「ここは快適。市の補助がなくなって3千円になるときついけど、共用スペースをだれかとシェアして、一人千円ぐらいになるよう工夫します」。堀田さんのように、マンションで夫婦でテレワークをしている人などの利用は多いという。

 高度経済成長期に労働者が利用する簡易宿泊所が多かった日進町だが、高齢化とともに生活保護受給者が多く居住していた。しかし15年5月、簡易宿泊所2軒が全焼、11人が亡くなる火災が起きた。その後、少しずつ町は変わっていく。市によると、日進町には今年3月現在で20軒の簡易宿泊所がある。そのうち「日進月歩」を含む5軒がゲストハウスにリニューアルしている。

 「コロナ禍で、どこも大変ですが、いろいろな工夫をしている」と吉崎さん。テレワークを進めるところもあれば、女性が利用しやすい工夫をしているところもある。周辺の宿約20軒で構成する川崎ビジネス旅館組合長でもある吉崎さんは、「コロナを乗り越えたあとに、遠くの人も近くの人もいろいろな人が気軽に立ち寄れる町になれば」と期待を寄せている。

 問い合わせは「日進月歩」(044・223・7478)へ。市の補助付きプランは日進月歩を含む29施設が対象で、インターネットの「じゃらん」で申し込む。市内在住、在勤者が対象。第1弾は5月いっぱいで、6月に第2弾も予定している。問い合わせは市観光プロモーション推進課(044・200・2327)へ。(斎藤博美)

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