第12回基地分散でも沖縄に拠点、なぜ必要 米軍事専門家の見方

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 沖縄の米軍基地について考えるとき、普天間合意があった25年前と大きく異なるのが、中国の軍事的台頭という安全保障環境の変化です。中国軍の海洋進出に詳しいトシ・ヨシハラ米戦略予算評価センター上級研究員に、米軍と日本への影響を聞きました。

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なぜ、普天間は動かないのか。これからどこへ向かうのか。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の電撃的な返還合意から25年。節目の今年、ワシントン、東京、沖縄にいる朝日新聞記者たちが、日米沖の政治家や官僚、識者や普天間周辺で暮らす人たちに取材しました。

 ――米国にとって、沖縄に米軍基地が集中していることの軍事的な利点とは何でしょうか。また、不利な点はありますか。

 「沖縄は戦略的に中心となる場所です。台湾有事と朝鮮半島有事という、ふたつの発火点に近いからです。また、中国本土とも東シナ海を挟んだだけの距離にあります。戦略的にも軍事的にも、非常に重要な場所に位置しています」

 「ただ、この地理的な優位は不利な点にもなります。沖縄が中国のミサイルの射程内にあることを意味するからです。中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否)システムと戦略の一部は、多くのミサイルなどの武器によって、米国の前方基地を使用不能にすることが目的です。沖縄、特に嘉手納空軍基地は米軍の航空能力の重要なハブであり、中国のミサイルの主要な標的になる恐れがあります。沖縄は重要ではあるが、同時に中国のA2/ADに対して脆弱(ぜいじゃく)になりつつあるということです」

Toshi Yoshihara 1972年生まれ。米海軍大学教授を経て米戦略予算評価センター上級研究員。著書に中国軍の海洋戦略を研究した「太平洋の赤い星」(共著)など。

 ――安全保障環境が変化する中で、普天間合意は25年前のものです。

 「移設の努力はこれだけの年月の後も続いています。これは、同盟国の国土への前方展開を変更することを、当然視できないことを意味していると思います。戦略的にも運用上も理にかなっていても、政治的に不安定になりかねないことを示しています。そして地元の反対が、米国と受け入れ国の政治的・外交的な資産を過度に消費する恐れがあります」

 「私がより広い観点から言え…

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連載証言 動かぬ25年 普天間返還合意(全13回)

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