「いつ崩れても…」 熊本地震5年、被災古墳の復旧は
2016年4月に発生した熊本地震から5年がたつ。国内最大の考古学者の団体である日本考古学協会が3月、地震直後に設置した「熊本地震対策特別委員会」のこれまでの活動や、遺跡・文化財の復旧の現状を報告書にまとめた。地震で多くの古墳が被災したが、被害が大きかった所では修復の方法を検討中の市町が多く、まだ実態把握も進んでいない古墳もあるという。
同協会は地震直後の16年5月、5年の年限で特別委員会を設置し、文化財の被害把握と復旧の支援に乗り出した。熊本県ではこの地震で、国や県、市町村が指定した建物や美術工芸品、史跡などの文化財のうち、約12%にあたる355件が被災。特に揺れの大きかった益城町では、町内の文化財の約3分の2が何らかの被害を受けた。
国の特別史跡である熊本城については、熊本市が「復興のシンボル」と位置づけて着実に復旧を進めている。20年がかりの事業として建物や石垣の復旧計画が立てられ、今月には修理を終えた天守閣の公開が再開される予定だ。
48基の古墳に被害、対策未着手も
一方、古墳の復旧には遅れがみられる。特別委副委員長の杉井健(たけし)・熊本大准教授のまとめによると、熊本地震やその後の余震で被害が確認された古墳は、国や自治体の文化財に指定されていない2基を含めて48基。その中で被害が軽かった12基は復旧が終わり、10基で作業が進行中だ。ほかの古墳の多くは復旧方法を検討中、または経過観察中だが、対策に着手できていない古墳も7基あった。
被災した古墳のうち、嘉島町が復旧を模索している国史跡の円墳、井寺古墳(5世紀後半)を取材した。横穴式石室の内部に様々な線刻や彩色が施された「装飾古墳」だ。地震の震源になった断層に近いため、墳丘に亀裂が入るなど、特に大きな被害を受けた。復旧に向けた発掘調査の結果、これまで直径28メートルとされていた墳丘は後世の土砂採取で大きく削られており、覆っている土が薄いために石室が不安定になっていることが分かった。
大きな余震があるたびに
横穴式石室の入り口に設けら…