南阿蘇鉄道、コロナで再び試練 期待されるJR乗り入れ

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東野真和
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 2016年4月の熊本地震で被災し、23年夏の全面復旧をめざす第三セクター南阿蘇鉄道(南鉄、本社・熊本県高森町)が経営の正念場を迎えている。コロナ禍で20年度の運輸収入は地震直後並みに落ち込む見通しで、旧国鉄から転換した際の補助金などが間もなく底をつく。復旧後のJR豊肥線との乗り入れによる利用者増にかける。

 南鉄は、阿蘇観光や通学の足として利用されてきたが、地震で鉄橋やトンネルが損壊。全線の6割にあたる立野(同県南阿蘇村)―中松(同)間10・6キロが今も不通のままだ。

 起点の立野を出た列車が最初にさしかかる第一白川橋梁(きょうりょう)(全長約166メートル)で2月、撤去作業が始まった。地震で橋脚部分の地盤が崩れて橋も変形し、架け替えが必要になった。両岸の巨大クレーンの間に通したワイヤで橋を支えながら慎重に作業は進む。土木学会選奨の土木遺産にも認定されている橋の外観は変えずに架け替える。

 南鉄の復旧費用は、橋の架け替え工事費約40億円を含めて計約70億円と試算されている。社長を務める草村大成・高森町長が国に要望し、実質97・5%が国費でまかなわれることになった。これが新たな補助制度となり、その後の大災害で被災した地方鉄道に適用されている。

 それでも経営は苦しい。

 被災前には外国人観光客が増えて利用者は15年度に約25万7千人に伸び、約1億1千万円の運輸収入があったが、地震のあった16年度は約3万7千人、約1500万円まで激減した。

 全線17・7キロのうち比較的被害の少なかった7・1キロは被災後3カ月余りで運行を再開。吹き抜けのトロッコ列車が人気でじわじわ客足を戻していたが、今度はコロナ禍が追い打ちとなった。19年度に約2900万円まで回復した運輸収入は20年度は1400万円程度に落ち込む見通しだ。

 南鉄は、1986年に旧国鉄から第三セクターに移行した時の転換交付金など約4億5千万円を基金にしていた。それを地震後に取り崩さざるを得なくなり、20年度末で1800万円まで目減りした。21年度中に底をつくため、赤字補塡(ほてん)のため沿線の高森町と南阿蘇村が同年度予算で対応する予定だ。

 それらとは別に南鉄発足時に沿線住民から預かり、利息のみを運用していた基金6300万円もあるが、草村町長は「住民の鉄道の象徴として意地でも手をつけない」と話している。

 関係者が期待するのが、立野…

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