のんちゃんに記録抜かれ本望 好タイム続出が物語ること
こばゆりの今日も走快!
「こんにちは。日本一1500メートルを走るのが速い小林祐梨子です!」
現役引退後、講演会やイベントで自己紹介するとき、私のおきまりのフレーズでした。今はこうです。
「最近、抜かれて2番目に速い小林祐梨子です」
これがかえってウケていますが。
私は兵庫・須磨学園高3年だった2006年に4分7秒86という女子1500メートルの日本新記録を出しました。
破られたのは14年後の昨年8月です。セイコーゴールデングランプリ陸上2020東京で田中希実(のぞみ)選手が4分5秒27で走ったのです。
正直、塗り替えてくれたのが、田中選手でうれしかった。ここでは彼女のことを、親しみを込め、普段通りに「のんちゃん」と呼びますね。
地元が同じ兵庫県小野市。北海道マラソンで2度優勝した、お母さんの千洋(ちひろ)さん(旧姓・小倉)を通じて、のんちゃんが小学校に入学する前から知る仲なのです。
私の引退レースになった15年の兵庫県郡市区対抗駅伝競走大会では同じ小野市のチームで走りました。のんちゃんは当時、まだ中学生。おぼこい(幼い)無名のランナーでした。ただ、序盤から突っ込んで、守りに入らずに力を出し切れるスタイルは当時から。「将来が楽しみだな」と感じていました。
のんちゃんはいま21歳。昨年12月には女子5000メートルで東京五輪代表に内定しました。11も年下ですが、彼女の姿勢は、私に多くの気づきをもたらしてくれました。
5000メートルを主戦場にしても、1500メートルの練習をおろそかにせず、持久力もスピードも突き詰めています。当然、練習はより過酷になりますが、海外では5000メートルの選手でも、1500メートルを日本記録より速く走ります。
日本トラック界の底上げのため、記録の更新は必要なことでした。私の記録も塗り替えられるなら、それがのんちゃんであってほしいと思ってきたのです。
東京五輪が延期になってからのこの1年、のんちゃんに限らず、陸上界ではたくさんの好記録が生まれました。
女子1万メートルでは昨年12月の日本選手権で新谷(にいや)仁美選手が、男子マラソンでは今年2月のびわ湖毎日で鈴木健吾選手が、それぞれ日本新を出しました。
東京五輪代表こそ逃したものの、女子マラソンの松田瑞生(みずき)選手が3月の名古屋ウィメンズで2時間21分台の好タイムを出して優勝し、涙を流した姿も印象的でした。
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