石垣からあふれ出る桜 国宝・彦根城の内堀

筒井次郎
【動画】桜の名所として知られる彦根城。そのきっかけは1934年、地元の議員だった吉田繁次郎が植えた千本のソメイヨシノだった=筒井次郎撮影
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 まるで桜が、石垣の奥から勢いよくあふれ落ちるようだ。

 その風景は、彦根城滋賀県彦根市金亀町)の中堀の角にある。光に照らされた夜は水面に姿が反射し、一層勢いを増す。

 江戸時代、城内に桜はなかった。桜の名所となるきっかけは1934(昭和9)年、地元の議員だった吉田繁次郎が植えた千本のソメイヨシノだった。

 桜の城にして城下町を観光で発展させたいと夢を描いた繁次郎。しかし、なかなか受け入れられない。一軒一軒歩き回って寄付を頼んだ。雑草だらけの城の周りに苦労して苗を植え、その後も世話をしたそうだ。

 いま眼前に広がる見事な風景には、先人のそんな夢が込められている。

     ◇

 メモ JR彦根駅から約1キロ。大名庭園玄宮園を含む入城券は一般800円、小中学生は200円。中堀周辺は無料。彦根城運営管理センター(0749・22・2742)。

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この記事を書いた人
筒井次郎
文化部|大阪駐在・歴史担当
専門・関心分野
世界遺産、京都・奈良、寺社・遺跡などの文化財