北朝鮮のサイバー攻撃「1日158万回」 資金狙いか

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ソウル=鈴木拓也 ニューヨーク=藤原学思

 北朝鮮がサイバー空間での活動を活発化し、能力の強化をはかっている。新型コロナウイルスの流入を防ぐ中朝国境封鎖で経済は悪化しており、サイバー攻撃による違法な資金稼ぎに活路を見いだそうとしているようだ。

 韓国の情報機関・国家情報院は2月、非公開で行われた韓国国会の情報委員会で、北朝鮮が韓国の政府機関や企業などに仕掛けた最近のサイバー攻撃は1日平均で約158万回と報告した。国情院の調査によると、北朝鮮は、パソコンやサーバーのデータを暗号化し、解除のための金銭を企業に要求する「ランサムウェア(身代金ウイルス)」によるサイバー攻撃を繰り返している。製薬会社を狙い、新型コロナのワクチンや治療薬の情報入手を試みたことも確認された。

 韓国政府機関の秘密情報を狙ったとみられるサイバー攻撃では、職員のスマートフォンをハッキングして連絡先や文字メッセージを奪ったとされる。女性職員を装ってフェイスブックを開設し、顔写真に引かれて友達申請に応じた男性職員に内部資料を要求するといった事例もあった。

 ビットコインなどの暗号資産も狙われる。国情院は2018年2月に、ある仮想通貨交換所が北朝鮮のハッキングに遭い、会員の暗証番号が奪われ、数百億ウォン相当の仮想通貨が盗まれた事例を韓国国会に報告した。北朝鮮が海外を拠点に、違法な賭博サイトや、オンラインゲームで使われるアイテムの不法販売サイトなどを運営している実態は、5年以上前から確認されている。

 2020年の韓国国防白書は、北朝鮮でサイバー攻撃を担う人員を約6800人と分析する。北朝鮮の大学でコンピューター技術を教えていた元脱北者らによると、金正恩(キムジョンウン)総書記は13年11月に、「師団級のサイバー司令部を組織し、3年間で世界最強のサイバー戦力を保有せよ」と指示。大々的な組織改編が行われ、軍偵察総局を中心にサイバー部隊が強化された。

 具体的には、偵察総局の「121局」が敵国の情報システム破壊、「91所」が最新の防衛技術の入手、「180所」が外貨や仮想通貨の獲得を担っているという。深刻な経済状況のなか、この脱北者は「金正恩にとって最も重要なのは金だ。180所にハッキングのエースを集めているようだ」と話す。

 北朝鮮はこうしたIT技術者…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論