ひとはなぜ会食したがるのか 「一味」の伝統が残存?

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編集委員・宮代栄一
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 新型コロナ感染拡大の要因の一つとされ、感染症の専門家などから、抑制するよう強い注意喚起がなされている「会食」。感染症にかかる危険を冒してまで、人はなぜ一緒に食事をしようとするのだろうか。食文化の変遷に詳しい歴史学者の原田信男さん(71)が、この問題を歴史的に考察した『「共食(きょうしょく)」の社会史』(藤原書店)を出版した。

 原田さんによると、誰かと一緒に食事をする「共同飲食」(共食)は人間特有の行為で、同じ時間に同じ場所で同じようなものを食べることで共食者同士の親近感を強める作用があるという。よく「同じ釜の飯を食う」と言うが、英語にもほぼ同じ意味の「To drink of the same cup.」という言葉があるらしい。

 人類史的にみると、共食は人類が進化していく過程で、集団で狩猟を行い、調理のために火を使うようになるなかで獲得された文化と考えられる。

 人間は脳が大きく、一人前になるまでに時間がかかる。必然的に、子供の成長を支える家族という集団のもとで長期間過ごす必要があった。「そこで共に生き、互いに紐帯(ちゅうたい)を強める過程で、共食が行われるようになった」と原田さん。

 やがて共食は社会的な意味も持つようになる。平安時代の法令集「延喜式」には、外国の使者が訪れると、役人が共食のために遣わされた旨が記されている。饗宴(きょうえん)で心を通じ合わせて、外交の本題に入ったようだ。

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