五輪海外客の受け入れを断念 小池知事「安全を最優先」
今夏の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックをめぐる政府、東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者の代表者協議が20日、東京都内であり、海外在住の一般観客の受け入れ断念で最終合意した。日本側が「安全最優先」として見送りの結論を出し、IOC、IPCが了承した。新型コロナウイルスの感染収束が見通せず、今夏に自由な入国を保証するのは難しいと判断した。
1年前、安倍晋三前首相が大会延期を決める際に表明した「完全な形での開催」は実現しなかった。全体の観客数の上限は4月中に基本方針を出す。複数の大会関係者によると、「50%」を軸に検討を進めるという。
5者協議には丸川珠代五輪相、組織委の橋本聖子会長が出席し、東京都の小池百合子知事、IOCのトーマス・バッハ、IPCのアンドリュー・パーソンズの両会長はオンラインで参加した。
丸川五輪相は「国民の理解を得るために、アスリート以外の関係者縮減が不可欠」と会議で述べたと報道陣に明かした。小池知事は終了後、「安全安心を最優先することで、大会を成功させる流れを確実にしていきたい。やむを得ない判断だ」と述べた。橋本会長は来日できない観客に向け、「人々をつなぐことができるよう検討も進める」と話した。IOCのバッハ会長は「我々はこのパンデミック(世界的大流行)が起きた当初から、犠牲が必要になると言ってきた」などとコメントを出した。
菅義偉政権は当初、海外からの観客を受け入れ、新型コロナで激減したインバウンド(訪日外国客)回復のきっかけにする考えだった。しかし、現在は外国人の新規入国を原則認めておらず、変異株も広がるなど世論の不安も大きいことから、行動を管理できない海外の一般客を受け入れるのは水際対策として難しいとの判断に傾いた。
海外の一般客を受け入れないのは、近代五輪では初めて。東京五輪は、世界中から集った人々が相互理解を深めて平和な社会の推進をめざす、五輪の根本思想「オリンピズム」が十分に体現されない大会となる。また、五輪の経済効果が減ることは避けられず、菅政権はインバウンド戦略の見直しを迫られる。
全体の観客数の上限はプロ野球などスポーツイベントでの上限を参考に、政府主導で決める。「50%」を軸に検討するが、「感染が広がれば、無観客の可能性もある」と指摘する大会関係者もいる。
組織委によると、五輪・パラリンピックの海外在住者向け一般チケットは63万枚で、今後、払い戻しなどの手続きに入る。スポンサーの招待客は関係者として入国を認める可能性がある。